ゲーミング・シミュレーション文献ガイド
実験経済学の先駆者達は、今日ゲーミング・シミュレーションと呼ばれる
ものとも関わっていました。ゲーミング・シミュレーションとは、簡単に
言うと、モノポリーやリスク、ディプロマシーといったボードゲームや、
アバロンヒル社のシミュレーションゲーム・ウォーゲームのようなゲーム
(コンピュータ化されたものもあれば、そうでないものもある)を設計し、
これを用いて被験者の行動を観察する研究のことです。
ゲーミング・シミュレーションでは、ゲーム中に数回、被験者は自分たち
自身の行動にともなって社会心理学的ジレンマ状況に直面します。これを
フェーズというわけですが、ゲーミングを通じてこのような複数の社会心
理学実験を盛り込むことがゲーミングのねらいであるようです。それは、
通常の社会心理学実験が人工的に作成・限定された社会状況で実験するの
に対して、ゲーミング・シミュレーションでは、このような実験における
人工的に現実から切り離された環境においてみられる人間行動や判断は、
実世界における同じ被験者の行動や判断とは異なるのではないか、という
疑問から出発しているからです。これは、ミクロ経済学の言葉を少し誤用
して考えると、通常の社会心理学実験が部分均衡モデルであるのに対して、
ゲーミング・シミュレーションは一般均衡モデルで考えなければいけない、
と言っているように思います。
ただ、今日的な実験経済学の見地からは、ゲーミングで実際に科学的な研
究ができるかについては疑問点もあると思います。以下は日本語で手に入
りやすいゲーミング・シミュレーションに関する本です。
[ゲーミング・シミュレーション]
- Greenblat,C.S.(1994)『ゲーミング・シミュレーション作法』共立出版
- 広瀬幸雄編著(1997)『シミュレーション世界の社会心理学』ナカニシヤ出版
- 小幡範雄(1992)『環境コンフリクト実験ゲーム』技報堂出版
[コメント]
1.は、ゲーミング・シミュレーションという分野を開拓してきた著者による、ゲーム設計
の手引き書。
2.は、南北格差問題をテーマとしたゲーミングの具体例とともに、実際にゲーミングをしてみるための資料がついた実用的な本。さらにゲーミングで見られる被験者の行動について社会心理学的に分析している、社会心理学入門という側面もある本。
3.は、環境問題を例に取ったゲーミング・シミュレーションの本。
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