教員紹介 複雑系知能学科
川越 敏司 (准教授)
Toshiji Kawagoe- ■所属学科:
- 複雑系知能学科
- ■専門分野:
理論経済学、ゲーム理論、実験経済学
- ■担当科目:
ゲーム理論基礎、ゲーム理論応用、経済システム入門ほか

プロフィール
究極のテーマは、限られた情報と計算能力しかもたず、制度や社会規範の影響を受けている限定合理的な人間行動の原理を、実験経済学の手法で明らかにするこ とです。特に、情
報の不確実性がある戦略的状況における人間行動に感心があり、入札制度改革やマーケティングを実験経済学の観点から研究しています。最近 は、学習理論に関心があり、ど
のような学習ルールが実験で観察される人間行動を一番よく説明できるのかを比較検討しています。
・最終学歴:大阪市立大学大学院経済学研究科
・学位 :博士(経済学)
・前歴 :埼玉大学経済学部
・着任時期:2000年4月1日
仕事の紹介
a) 人間行動に関する実験データを説明する学習理論アカデミー賞を受賞した映画『ビューティフル・マインド』に描かれたジョン・ナッシュは、合理的な経済主体による均衡行動をナッシュ均衡点と呼ばれる概念でモデル化しました。これは今日でもゲーム理論においてもっとも重要な概念です。しかし、実験を行うとしばしば人間はナッシュ均衡点の予測とは違った行動を取ります。それは、現実の人間はナッシュ均衡点が想定するほど合理的ではなく、情報の不確実性や計算能力の限界のもとで行動する限定合理的な存在でしかないからです。ところが、限定合理的な人間の行動原理とはどのようなものかについては様々な見解が対立して おり、まだ万人が納得できる理論は現れていません。そこで現在、ゲーム理論的な状況における一連の実験データを対象にして、限定合理的な学習理論のどれが もっともよくデータを説明できるかを比較検討するために、統計学的な解析とコンピュータ・シミュレーションを行っています。
b) 比較制度分析:制度・社会規範の形成・進化
人 間行動は歴史的・進化的に形成・維持されてきた制度や社会規範の影響を受けています。人間の認知や思考様式は、人間が進化の過程で直面してきた社会的状況 に特定的な仕方で獲得されてきており、そうした社会的状況と切り離しては考えられないという考え方(進化心理学)もあります。交渉ゲームや社会的ジレンマ の実験を行うと、経済学が想定するような利己的行動のみならず、公平感や社会的交換の原理に基づく行動が頻繁に観察されます。人間行動はこうした制度や社 会規範に影響を受けるとともに、逆に人間行動がそうした制度や社会規範を形成・維持する側面も見逃せません。文化心理学者の北山忍はこれを「心と社会の相 互構成過程」と呼んでおり、比較制度分析を提唱する経済学者・青木昌彦は経済的なゲームと社会交換のゲームとが相互に結合されたゲーム状況のモデル化をはじめています。実験経済学では、これまでこうした制度や社会規範の影響を実験的にコントロールして、実験室から排除してきましたが、むしろ制度や社会規範の影響を積極的に認めて実験室に取り込んでいく方法論を確立していく必要があります。現在、こうした課題に取り組んでいます。
最近の著作
1. 川越敏司,『行動ゲーム理論入門』,NTT出版,2010年
2. 川越敏司,『実験経済学』,東京大学出版会,2007年
3. T. Kawagoe and H. Holm, "Face-to-Face Lying - An experimental study in Sweden and Japan."
Journal of Economic Psychology, 31, 310-321. 2010.
4. T. Kawagoe and H. Takizawa, "Equilibrium Refinement vs. Level-k Analysis: An Experimental
Study of Cheap-talk Games with Private Information." Games and Economic Behavior, Vol.66, No.1,
238-255, 2009.
5. Y. Hamaguchi, T. Kawagoe and A. Shibata, "Group Size Effects on Cartel Formation and the
Enforcement Power of Leniency Programs." International Journal of Industrial Organization, Vol. 27,
145-167, 2009.
6. T. Yamamori, K. Kato, T. Kawagoe and A. Matsui, "Voice Matters in a Dictator Game."
Experimental Economics, Vol. 11, 336-343, 2008.





