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教員・研究紹介

教員紹介 複雑系知能学科

大沢 英一   (教授)

Ei-Ichi Osawa
■所属学科:
複雑系知能学科
■専門分野:

人工知能、自律エージェントアーキテクチャ、大規模マルチエージェントシステム、協調ロボット

■担当科目:

プログラミング演習、人工知能、知的プログラミング、自律システム、分散協調システム、情報アーキテクチャ演習 ほか


プロフィール

マルチエージェントシステム、組織的問題解決、視覚認知(資源限定性と注視点制御の関係の解明)、情動/感情理解、情動/感情相互作用システム,サイバーシティなどの研究に従事。

・最終学歴:東京工業大学理学部数学科
・学位  :博士(工学)(慶応義塾大学大学院工学研究科計算機科学専攻)
・前歴  :株式会社 ソニーコンピュータサイエンス研究所 リサーチャ
・着任時期:2000年4月1日

仕事の紹介

実世界で動作するシステムは、それが利用できる情報や資源が限定されています。このような状況で世界を認知したり、与えられた問題を解決したり、タスクを達成するシステムは、そ の限定性にうまく対処し最良の結果を導き出せるものでなくてはなりません。
 私は、このように振舞う頑強なエージェントシステムの設計に興味があり、現在、二つ側面から研究を進めています。
まず、エージェント間の相互作用です。特に、エージェントの組織による問題解決に注目しており、
エージェントの局所動作と組織の大局挙動を考慮し柔軟で効率的な問題解決を行なう組織スキーマの設計などに取り組んでいます。
もう一つの興味は認知的側面にあります。注意の制御などを巧みに行ない資源限定状況で最良の認知結果が得られるエージェントの認知機構を探究しています。こ れらの研究項目について以下で少し細かく述べてみます。
 まず、エージェント間の相互作用についてです。
現在のネットワーク環境では、ソフトウェアエージェントと呼ばれるソフトウェアモジュールが、広域な情報検索、情報フィルタリング、スケジュール管理、メ ール処理などの目的で部分的に利用され始めています。
 ソフトウェアエージェントが利用される理由は、
その処理の柔軟性や自律性に対する期待からです。また、エージェントは、パーソナルメディアやインターネットといった、次世代を担うテクノロジーに支えられた生活環境の中で、上 手に人間の仕事を手伝ってくれるような知的で自律的なソフトウェアの代名詞として使われています。
 しかしながら、現状におけるエージェント技術は、
未熟な段階にあります。エージェントという言葉によって代表される大半のソフトウェアは、そういった知的な側面よりも、ユ ーザインタフェースの改善やプロトコルと呼ばれる計算機間で使われる言葉の定義に重きを置いているのが実情です。
 今後は、これまでの人工知能研究を背景としたエージェント理論/技術をどのようにして実際的なソフトウェアシステムに応用していくかということが重要な研究課題の一つになると思われます。私 の長期的な研究テーマもそこにおきたいと考えています。 ソフトウェアエージェントを実装するためには、
 (1)エージェント間の通信に用いられる共通語彙・概念、
 (2)エージェント通信言語、
 (3)エージェントプログラミング言語およびその実行環境、
 (4)エージェント間協調スキーマ、
 (5)ユーザを含めた実世界とのインタラクションの手法、
などが必要となります。これらのうち(1),(2),(3)の項目は標準化が必要な作業とされ、現在までにいくつかの方法が提案され各方面で実験が行なわれています。エ ージェント技術に基づくソフトウェアシステムをより高機能にするためには(4)の協調スキーマ、そしてそして(5)のユーザとシステムのインタラクションの項目が重要です。
今後の私の研究もそこに焦点を当てていきたいと思います。以下、それらのについて簡単に述べておきます。

[協調スキーマ]
 現在のソフトウェアエージェントでは、複数のエージェントが協調することにより、より複雑で大規模なタスクを達成するための枠組についてはほどんど考慮されていません。私のこれまでの研究では、
エージェントの利用可能性の変動に応じて柔軟に共同プランを生成する手法、さらに動的環境におけてエージェント組織を変更して効率よく問題解決する手法を提案してきました。
今後の研究では、このような協調の枠組を実際のソフトウェアシステムに応用していくことを計画しています。組織的問題解決を実世界の問題に適用する場合、様 々な形態の組織を動的にかつ柔軟に構成する必要があります。まず、組織のどのような特性がどのようなタスクの協調問題解決の効率に影響を与えているのかということを広範囲に調べ、
どのような方法により組織からそれらの特性に関するパラメタを抽出できるのかを検討する必要があります。そしてそれらのパラメタと組織のパフォーマンスの関係についてよい見通しを与えるための、
より一般的な組織的問題解決の理論とそれによるソフトウェア構成法に関して研究をすすめていくことを計画しています。

[ユーザインタラクションおよび実世界との統合]
 実世界でユーザを知的にサポートするエージェントシステムを構築するためには、システムはユーザからの明示的な入力に応答するだけではなく、シ ステムが能動的に実世界状況を認識しユーザーの意図を暗黙的に理解して、情報世界を動き回って適切な情報を検索したり、あるいは実世界状況に依存したタスクをユーザーに代わって遂行する機能が必要となります。
エージェントが実世界状況を認識しようとすると、複雑で悪構造を持つ大量のデータを知覚の対象としなければなりません。エージェントを効率よく動作させるためには、そ れらの大量のデータを均一に扱うのではなく、現在のタスクにおいて世界のどの部分に注視すべきかの指針を与えることが重要です。 
つまり、システムがユーザと同じ物理環境に存在して協調的に作業する場合、まず基本的に知覚系を通して得られる環境の情報に関して共通の認識が形成される必要があるわけです。そ のためにはエージェントが実世界のどの部分に注目すべきかという注視点制御や共同注意などの問題を解決しなければならず、これは重要な基本研究課題です。この研究に取り組むために、ユーザの注視点を観測し、
現在のタスクに対して重要な対象、その属性、また対象間の関係などを抽出して学習しモデル化するエージェントの機構の研究をしています。 以上、資 源限定されたエージェントのアーキテクチャと機能に関する研究に関して述べてきました。最近、これとは別の観点から、
人間を観測する研究を始めています。以下では、それについて述べます。

 それは、情動や感情の役割についてです。人間には情動や感情というものがあります。これは進化の過程で人間が獲得したものです。人間は環境の様々な刺激に反応しますが、特 定の刺激に対してある情動が働いたり、感情の変化を生じることがあります。また、人間の知的活動はこれらの情動や感情の変化に影響を受けることがあります。これはどういった事情によるものなのでしょうか?
 この問いに答えることは現時点では困難ですが、どのような刺激に対してどういった情動/感情の変化が起きるのかを探ることは部分的に可能になってきました。私の研究では、画 像処理と生理計測を用いています。
画像処理では、被験者の眼に着目し、まぶたの動き方などから、被験者の情動の変化をとらえようというものです。
例えば、被験者に映画などのコンテンツを見せ、ストーリーが展開していく上で、情動がどのように変化するかを実時間で観測します。同時に、被験者の生理計測を行ない、被 験者が現時点の刺激に対してどのように反応しているかを計測します。これらのデータを総合的に解釈して、現在の被験者の情動や感情を推定しようというものです。

 このような技術が確立されると、それは様々な方面に応用可能となるでしょう。一つは、コンピュータとのインタラクションにユーザの情動や感情が使える可能性があります。ユ ーザがどのような心的状態にあるのかをコンピュータが理解することで、それにより挙動を様々に変えることが考えられます。これをテレビゲームなどへ応用して面白いシステムを作ることができると考えています。
また、映画などのコンテンツ作りをする場合、視聴者において所望の結果を得るにはどのような刺激を与えればよいのかと言う、製作者側のノウハウになるかも知れません。そして、そ のよう知識をサポートしたコンテンツ製作用オーサーリングツールを構築することができるようになるかも知れません。

最近の著作

   1. Ei-Ichi Osawa and Mario Tokoro. "Collaborative Plan Construction for Multiagent Mutual Planning." In DECENTRALIZED  ARTIFICIAL INTELLIGENCE 3, Eric Werner and Yves Demazeau (eds.), pp. 169-187, 1992.

   2. Ei-Ichi Osawa. "A Scheme for Agent Collaboration in Open Multiagent Environments." In Proceedings of the 13th International Joint Conference on Artificial Intelligence (IJCAI-93), Vol. 1, pp. 352-358, 1993. (SCSL-TR-93-009)

   3. Ei-Ichi Osawa. "A Metalevel Coordination Strategy for Reactive Cooperative Planning" In Proceedings of the 1st International Conference on Multi-Agent Systems (ICMAS-95), pp. 297-303, 1995. (SCSL-TR-95-019)

   4. 大沢 英一,沼岡 千里,石田 亨. 分散人工知能における標準的小問題, コンピュータソフトウェア, Vol. 10, No. 3, 1993.

   5. 大沢 英一. 合理的エージェントによる共同プランスキーマ. コンピュータソフトウェア, Vol. 12, No. 1, 1995. (SCSL-TR-95-017)

   6. 大沢 英一. 協調プランニングにおける動的組織再編とメタレベル整合戦略 - 追跡ゲームにおける考察-. コンピュータソフトウェア, Vol. 12, No. 1, 1995. (SCSL-TR-95-018)

   7. 大沢 英一. マルチエージェント環境における交渉のモデル. 人工知能学会誌, Vol. 10, No. 5, 1995. (SCSL-TR-95-020)

   8. Ei-Ichi Osawa, Hiroaki Kitano, Minoru Asada, Yasuo Kuniyoshi,Itsuki Noda. "RoboCup: The Robot World Cup Initiative" In Proceedings of the 2nd International Conference on Multi-Agent Systems (ICMAS-96), pp. 454, 1996.

   9. Hiroaki Kitano, Minoru Asada, Yasuo Kuniyoshi, Itsuki Noda, Ei-Ichi Osawa,and Hitoshi Matsubara. "RoboCup: A Challenge Problem for AI" AI Magazine Vol. 18, No. 1, Spring 1997.

  10. Hiroaki Kitano, Milind Tambe, Peter Stone, Manuela Veloso, Silvia Coradeschi, Ei-Ichi Osawa, Hitoshi Matsubara, Itsuki Noda, and Minoru Asada. "The RoboCup Synthetic Agent Challenge 97" In Proceedings of the 15th International Joint Conference on Artificial Intelligence (IJCAI-97), Vol.1, pp.24--29, 1997.

   1. 沼岡千里、大沢英一、長尾確著、「マルチエージェントシステム」、共立出版

   2. 北野宏明編、「グランドチャレンヂ-人工知能の大いなる挑戦-」、共立出版

   3. 共訳,「人工知能エージェントアプローチ」,共立出版
      「1995年,人工知能学会大会優秀論文賞」

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