Bグループ 幼児の発達心理学

 
  環境を共有した人間は似るのか?

 

 1. 概要

   あなたは親や兄弟に似ていると思いますか?似ているとひとことで言っても様々な要因があると思います。顔だったり、体つきだったり、性格や人間性も多種多様です。ここでは人間性の観点から親と子供の人間性について書いていきます。

 2. 背景

   まずは教養仮説というものについて知ってください。教養仮説とはジュディス・リッチ・ハリスが唱えた考え方で、遺伝的要因よりも環境的要因を重視する考え方です。
この教養仮説は昔は堅く信じられていました。今回の話でいうと、「子供が親に似るのは同じ環境で育ったから」ということになります。


 3. 調査と結果

     しかし、トマス・バウチャードはその教養仮説に疑問を抱いていて、大規模な調査を行いました。その調査は、生まれてから別々の家庭で育った一卵性双生児(双子)について調査を行うというものです。この双子は遺伝的要因を共有していますが、環境的要因は共有していません。そして、トマス・バウチャードは成人した双子にパーソナリティを調べるアンケートを行いました。パーソナリティ特性とは不安になりやすい、衝動的である......といった人間性を示すものです。
すると調査結果は見事にパーソナリティ特性が一致していました。つまりジュディス・リッチ・ハリスが唱えた教養仮説は間違っていて異なる家族の中で育つことはパーソナリティの類似性に影響を与えなかったのです[1]


 4. 結論

     結果的には遺伝的要因のほうが環境的要因よりも影響を与えるということです。しかし実際には遺伝的要因も環境的要因も同程度影響を与えています。そして、子供が幼稚園や小学校に入学することで、周りの人や先生と関わることで環境的要因は少しずつ薄れていきます。つまり環境を共有した人間が似る(家族や兄弟が)のは遺伝的要因によるものだったということになります。

(文責 増成)                                                           

参考文献
[1] Loehlin,J.C.(1992). Genes and environment in personality development. Newbury Park, CA:Sage.