モーツァルトの音楽を聴いた子供は頭が良くなる？
1. 概要
モーツァルト効果とはモーツァルトの音楽を聴いたら頭が良くなるというものです。音楽を聴いただけで知能が上昇するのはにわかに信じがたいことですが、実際に論文があります。このトピックではそのモーツァルト効果について書いていきます。
2. 背景
まずは、モーツァルト効果について書かれていた論文について少し書いておきます。
その論文の内容は、モーツァルトの音楽を１０分間聞かせた大学生の空間認識能力が一時的に向上したというものです[1]。成人の知能を測る方法にはWAISⅢというものがあり、その中には空間認識能力を測るテストが含まれています。
話はモーツァルト効果に戻りますが、なぜモーツァルト効果はここまで広がったのでしょうか。大きな理由はこの論文が世界的に権威のある科学雑誌のネイチャーに掲載されたことです。これは大きな波紋を呼びました。アメリカの教育者で音楽者でもあるドン・キャンベルがクラシック音楽を聴いた後に知能が上昇することについて言及したことも原因とされています。
ここで述べた論文では、大学生を対象とした実験についての話です。しかし、広がったモーツァルト効果の話では子供についての話です。論文の内容と広がった話で内容が違うのは、報道機関やおもちゃを販売する会社がモーツァルト効果を派手に持ち上げたからと言われています。乳幼児にも効果があるだろうと憶測のもとで赤ちゃん向けのCDやモーツァルトの音楽に合わせて転がるおもちゃを販売したのも原因の１つと言われています。実際にドン・キャンベルのCDは世界で２３００万枚以上も売れました[2]。右にある写真がドン・キャンベルのCDです。
3. 調査と結果
ここまで流行ったモーツァルト効果ですが、本当に効果があるのでしょうか？論文では大学生の空間認識能力について述べられていますが、幼児の知能に関しての記述はありません。実際に幼児にモーツァルトの音楽を聞かせて、知能について研究した論文はないのです。
胎児にモーツァルトの音楽を聞かせると頭が良くなるという話もありますが、これについても実験を行って論文を書いた研究者はいませんでした。実際に胎児にモーツァルトの音楽を聞かせても、生まれた子供が頭がよくなっているかは測りようがありません。
話は乳幼児から離れますが、他の論文ではモーツァルトの音楽である必要はないと記述されています。それは自分にとってリラックスできる音楽で良いし、それがまた音楽である必要すらないのです。
4. 結論
モーツァルトの音楽を聴いて永続的に頭が良くなるということはありません。しかし、モーツァルトの音楽を聴いた後には空間認識能力が一時的に向上します。また、モーツァルトの音楽に限らずとも同様の効果を得ることができます。
(文責 増成)
参考文献
[1] Rauscher,F.H., Shaw, G.L, & Ky, K.N.(1993). Music and spatial task performance. Nature,365,611
[2] Nelson,C.(2003). Mozart and the miracles. The fuardian. Retrieved September12, 2008 from http://arts.guardian.co.uk/fridayreview/story/0,,871350,00.html