Bグループ 幼児の発達心理学

 
  言語を覚える大事な時期はいつ?

 ここでは幼児が言語を覚える時期について、発達心理学の観点から考察します。

 1. 概要

   人間は出生から20歳になる頃まで、心身・知識共に飛躍的な成長が見られます。リンパ系の発達や、骨格・筋肉の発達もこの間がピークと言われています。一方で、言語を覚える時期を考察する上で重要になるのが「臨界期」と「環境」です。この2点を踏まえつつ、1920年にインドで発見された少女の事例を題材に本テーマについて考察します。

 2. 調査内容

   
まずは概要で述べた2点について説明します。1つ目の「臨界期」というのは、発達の多くの側面に見られる、その特性を獲得するための限られた期間のことです[1]。言語の獲得には、臨界期内で外界から言語刺激を受けることがとても重要です。2つ目の「環境」は主に発育環境を指しています。外界からの言語刺激が多い環境で育つことで、言語の基礎を自然と獲得するのです。
  ここでインドで発見された、幼少期に人間の環境で育たなかった
「狼に育てられた少女」の事例を紹介します。1920年、インドの山中で狼の群れから2人の少女(推定8歳、1歳半程)が救出されました。8歳の少女は発見当初、言葉を話すことはできず、狼の習性を身につけていました。この少女を人間の社会に適応させるため、亡くなるまでの9年間を熱心な教育の下、人間の社会で過ごしますがその間に獲得できた言葉はおよそ50語ほどでした[2]

 3. 考察

    「狼に育てられた少女」の事例から、出生から乳幼児期の発育環境は、子どもが言語を覚えるのにとても重要であると言えます。言語の獲得はいつからでも始められるものではなく、乳幼児期で無意識的に刺激を受け続けることが必要です。私たちが英語を勉強することは確かに言語の獲得ではありますが、それは母国語(日本語)の理解があってこそのものだと考えます。

 4. 結論

    出生から乳幼児期の期間は、言葉の概念がゼロの状態から言語を獲得する、とても大変かつ重要な時期であると言えます。個人差があるためピンポイントにその年齢を定めることはできませんが、出後から言葉を発し始める2~3歳頃までの期間は言語を覚える大事な時期と言えます。言語に限らず知識・経験がゼロの子どもたちにとって、外界からの刺激(発育環境)は、その後の発育に大きな影響を与えるのでより多くの経験をさせてあげることが大切です。

                                                               (文責 藤代)

参考文献
[1] 無藤隆, 岡本祐子, 大坪治彦(2009):「よくわかる発達心理学 第2版」, ミネルヴァ書房, pp44-45.
[2] シング, J. A. L. 中野喜達・清水知子 訳(1977):「狼に育てられた子」, 福村出版.