Bグループ 幼児の発達心理学

 
  運動神経を良くするには?

 ここでは運動神経について、発達心理学の観点から考察します。

 1. 概要

   
よく学校や職場などで、運動をする人間に対して、運動神経が良い・良くないという話題が挙がります。運動は私たちの生活を構成している要因の中で、全ての動作に強く関係している重要な要因の一つであると言えます。その運動神経ですが、生後からおよそ20歳にかけて、飛躍的な成長が見られる期間があるのをご存知でしょうか。その急発達期を知ることで、より効果的な育児や将来のスポーツ選手育成に期待が持てます。

 2. 調査内容

   
運動神経の良し悪しを考える上で、まずは神経系の発達がどの期間に行われるのかを調査しました。生後からおよそ20歳までの身体発達を考察する上で、Scammon(1930)が作図した身体の4つの発育曲線パターン(スキャモンの発達曲線)がイメージしやすいです。   
   
右図がスキャモンの発達曲線になります。横軸は年齢で縦軸は20歳の発育度を100%とした場合の、発育状況を表しています。今回は、運動神経について調査するので青の神経系に着目します。
  神経系は、生後0歳から急激に発達し、4歳で全体のおよそ80%、6歳では全体のおよそ90%と特徴的なグラフとなっていることがわかります[1]。また、一方で6歳以降のグラフを見てみると、年齢を重ねるにつれて発育度の増加量が少なくなっていることがわかります。このことから運動神経を含む神経系の発達には、飛躍的な発達が見られる期間があることがわかりました。



 

 3. 考察


    
調査内容から、生後0~6歳にかける6年間という期間は、他の年齢よりも神経系の発達が飛躍的であることがわかりました。一方で、6歳以降のグラフを見てみると、12歳頃に全体のおよそ100%の神経系が出来上がっていることがわかります。12歳以降では神経系の発育度に大きな成長や衰退は見られないため、神経系の発育には臨界期(ある特性を獲得するための限られた期間のこと)のような期間があることがわかりました。

 4. 結論

    スキャモンの発達曲線を踏まえた考察から、運動神経を良くするには0~6歳の生活が重要であることがわかります。この神経発達のゴールデンタイムと呼ばれる6年間の間で、より多くの感覚神経に刺激を与えることが大切です。Gallahue(1982)は、6~7歳までに基本動作の習得が完了すると運動発達と年齢区分を定義しています[2]。現代社会ではテクノロジーが進歩し、テレビやゲームの普及が増加していることで、体を動かす機会が減りがちです。0~6歳の乳幼児期には複数のスポーツや遊びから、多彩な刺激を吸収することが運動神経を良くする効果的な方法であると言えます。

                                                               (文責 藤代)

参考文献
[1] Scammon, R, E. (1930). The measurement of the body in childhood, In Harris, J, A., Jackson., C, M., Paterson, D, G. and Scammon, R, E.(Eds). The Measurement of Man, Univ. of Minnesota Press, Minneapolis.
[2] Gallahue, D, L. (1982). Understanding motor development in children. John Wiley & Sons.