Bグループ 幼児の発達心理学

 
  睡眠が心身に与える影響とは?

 ここでは睡眠が心身に与える影響について、発達心理学の観点から考察します。

 1. 概要

   私たちの生活は時間を軸にして成り立っています。一日を大きく朝・昼・夜と分けると、人それぞれ各時間帯における行動は異なりますが、朝に起きて昼に活動して夜に就寝する、というおおよその生活リズムは相違わないのではないでしょうか。近年では就寝時刻の遅延化が注目されており、子も親からその影響を受けてきています。そこで、乳幼児期における睡眠が、発育にどのような影響を及ぼすのかを考察していきます。

 2. 調査内容

   
まず幼児期における子ども達の睡眠の現状についてついて考えていきます。三星(2012)が3~6歳の就学前児2,875人に対して、2008~2009年に行ったアンケート調査によると、子どもの平均就寝時刻が21時17分で22時以降に就寝する子どもは全体の約40%であることがわかりました[1]。また、平均睡眠時間は9.7時間であり、それぞれ海外(スウェーデン、ドイツ、フランス等)のデータと比べて遅く、短いことがわかりました[1]。このデータから日本の子どもは、就寝時刻が遅く睡眠時間が短いということが言えます。
  次にこれらの結果が及ぼす影響について考えていきます。岡村(2009)らが小学児童854名へ行ったアンケート調査によると、睡眠時間が9時間以上の生徒と8時間以上9時間未満の生徒では、心身の健康状況に有意な差(睡眠時間が多い児童の方が心身が健康的である割合が高い)が見られています[2]。特に「自分にはいいところがある」や「体がだるいと感じない」といった項目で有意な差(睡眠時間が少ない児童のほうがマイナス項目の割合が高い)がみられていることは、睡眠時間が多い生徒は少ない生徒に比べて心身的に健康であると言えます。


 
3. 考察

    
調査内容から、幼児期から睡眠時間の低下がみられ、就学時になると睡眠時間による心理的影響があることがわかりました。特に幼児期は身体発達において、重要な発育期間であるため、睡眠時間の低下は心理的影響だけでなく身体的にも及んでいると考えられます。

 4. 結論

    睡眠が心身に及ぼす影響を踏まえると、幼児期では22時以降の夜更かしを避け9時間以上の睡眠をとることを心掛けさせることが大切です。幼児期のうちに不規則な生活リズムを送ってしまうと、就学後にそのバランスを崩してしまう可能性があります。早い段階から、適切な時刻に就寝し睡眠時間を確保する生活リズムを身に着けさせることで、心身共に健康的な生活を送ることができると言えます。

                                                               (文責 藤代)

参考文献
[1] 三星喬史(2012):「日本の幼児および小学生の睡眠習慣と睡眠に影響を及ぼす要因」, 小児保健研究, pp808-816.
[2] 岡村佳代子(2009):「小学校高学年児童の生活リズムと朝食摂取との関連性」, 大阪教育大学紀要, 57, 2, pp37-47