前のページへ
  
サイトトップページへ

視覚障がい者のナビゲーションを可能にしている要因の解明に関する研究

研究概要

 みなさんは,自宅からこの大学までの道順をすでに覚えていますか? 何番目の角を曲がってどのバスに乗って・・・.また,みなさんの自宅からここまでのルートの風景を思い出せますか? 自宅を見つける目印になっている電柱とか,曲がり角から見える畑とか店とか・・・.人は目的地まで移動する時,風景の変化を手がかりにしながら目的の場所までたどり着くことができます.人が目的地まで移動することをナビゲーション(navigation)といいます.
 実は,人は単に視覚情報だけを目的地への移動に利用しているわけではありません.様々な感覚を利用できるのです.私たちの周囲にはたくさんの音,ニオイなどであふれています.これらも気づかれないうちに,重要な手がかりとして利用されています.
 このことは目の見えない人(盲人)の目的地までの移動を研究しているとよくわかってきます.盲人は目的地まで移動する際に,様々な音・足下の感覚・ニオイなどを巧みに利用しているのです.言い換えると,彼らはこれらの視覚以外の感覚が使えなくなると,移動に非常に不便さを覚えることになります.
 そのため,視覚に障害のある人たちに研究協力をしてもらい,私は目的地への移動に使われている環境の認知,特に視覚以外の感覚からの手がかりの利用方法について研究しています.

これまでの知見

 私は東京の地下街を実験場所として,視覚障害者に協力していただき,ナビゲーションに利用される情報の解明を行いました.その結果は下記のようにまとめることができます.
(1)全く見えない視覚障害者(盲人)は視覚以外の多様な情報を利用して目的地まで移動していること
(2)特に,地面の肌理の変化と音はルートの同定に重要であること
(3)音には,直接音源から発せられる音(直接音)と壁などに反射してから耳に到達する音(反射音)との2種類があるが,反射音はルートの構造を特定するのに極めて重要であること
(4)反射音による環境の認知(障害物知覚)が可能な盲人はそうでない者よりも正確に目的地まで移動できること

今後の研究

 進路決定にはナビゲータの要因と環境の要因とが複雑に関連し合っていると考えられます.これらの要因の相互作用を明らかにしていきます.