実験経済学についてのFAQ

ここでは、実験経済学についてよく聞かれる質問に対する答えを用意しました。
(問1)
実験経済学では、1グループ10人とか20人とかで 実験しますが、この程度で結論を導いて大丈夫ですか?

(答1)
通常、実験は実験計画法に基づいて構成し、実験デー タに対して統計検定を行います。統計検定は基本的に「疑わし きは罰せず」の原理でできているので、本来(母集団では)2 つのグループの間に差がないのに、差があるとしてしまう「統 計検定の第1種の誤り」は、はじめに定めた危険率(例えば、 有意水準5%)以上には起こり得ません。これはグループの大き さには依存しないわけです。
 ただ、本来母集団には差があるのに、差がないとしてしまう 「統計検定の第2種の誤り」はグループの大きさに依存してき ます。確率論的にこの第2種の誤りをある危険率におさえるた めにどれだけの人数が必要であるかを推計することができます が、人数を増やすと与えられた実験環境のもとでは実験条件を 均一に保つことが難しくなることが多いので、トレードオフがありま す。国内外の研究者たちの間での追試がその代わりをすること も多いので、第2種の誤りについてはそれほど神経質には考え ません。

(問2)
実験経済学では、被験者に現金の報酬を与えるそうで すが、それは必ず与えないといけないのですか?現金でなけれ ばいけないのですか?

(答2)
被験者に実験の成績に応じた報酬を支払わない実験に ついての論文は、専門誌では受け取ってもらえません。それは、 かつて1950年代にRANDコーポレーションなどで行っていた研究 で、現金報酬がないグループとあるグループで成績が有意に異 なることが判明してからだとされています。現金の代わりに、 授業の成績や金券を用いることもありますが、現金報酬ほどの 信頼性を得ていません。

(問3)
人工的に作り上げた実験室内の経済においては、被験 者は現実世界とは異なる行動をとるのではないですか?実験室 内の結果を現実の経済に外挿することは困難ではないですか?

(答3)
フィールドにおける経済の観察ではあくまで相関関係 しか得られないのに比べて、統制された実験で得られたデータ からは因果関係を得ることができます。また、実験計画を慎重 に行い、さらに十分な現金報酬を与えることで、実験で確かめ たい因果関係の実証に干渉する要因を排除していきますので、 計量経済学などよりも信頼のおける経済的因果関係の追求がで きます。


実験経済学のページに戻る