- 命題論理の融合原理
- [定義] (融合節)
任意の二つの節 C1 と C2 に対して,C1
がリテラル L を含み,C2 がリテラル ¬L を含むとき,
C1 から L を除いたものと C2 から ¬L を除いたも
のを合わせて 融合節 (resolvent) を作るこ
と.
- 具体例
C1 = P ∨ Q ∨ R, C2 = ¬Q ∨ S とすると,
C1 と C2 の融合節は P ∨ R ∨ S である.
- [定理] (融合原理と論理的帰結)
節C1,C2に対して,C を C1 と
C2 の融合節とすると,C は C1 と C2 の
論理的帰結である.
証明
- 融合原理と充足不能性
- C1 も C2 も単一節,つまり C1 =
L, C2 = ¬L の場合,C1 と C2 の融合節は空節であり,与え
られた節集合が充足不能(恒偽)であることを
あらわす.
- [定義] (演繹融合)
節集合 S に対して,次のような節の系列 C1, C2, ・・・,
Ck を S からの C の演繹融合
(deductive resolution)という.
- Ci は S に含まれる節であるか, Ci より前に
現れた節の融合節である.
- Ck = C である.
C が空節(□で表記する)のとき,その演繹融合を S の反駁
(refutation) という.
- (演習)
- 節集合 S = {(P ∨ Q ∨ ¬R), (P ∨ ¬Q), ¬P, R} について考え
る.Sにはどのような演繹融合,もしくは反駁が存在するか?
- (課題)
- 節集合 S = {( P ∨ R), (Q ∨ R), (¬P ∨ ¬Q ∨ R)} について考え
る.Sにはどのような演繹融合,もしくは反駁が存在するか?
- 融合原理の完全性
- 融合原理は完全である.つまり,任意の充足不能な節集合に対して,有
限回のステップで空節を導くことができる.
- [定理3] (充足可能性と論理的帰結)
- G1, ・・・, Gn と式 H が与えられ,
G1 ∧ ・・・ ∧ Gnが充足可能であるとき,
H が G1, ・・・, Gn の論理的帰結であるための必要
十分条件は,((G1 ∧ ・・・ ∧ Gn) ∧ ¬H ) が恒偽
であることである.
- (演習)
- 次の文章が与えられたとき,ユニコーン(unicorn: 一角獣)は架空(imaginary)
の動物であることを証明できるだろうか?またユニコーンが魔法を使える
(magical)ことを証明できるだろうか?さらに,角を持っていることを証明でき
るだろうか? 以下の文を命題論理に翻訳し,これらを融合原理を用いて証明しなさい.
- 「ユニコーンが架空の動物であれば,それは不死である(immortal).しかし,
ユニコーンが架空の動物でなければ,死ぬべき(mortal)ものである.ユニコー
ンが不死であるか,もしくは死ぬべきものであるならば,角を持っている
(horned).ユニコーンは角を持っていれば,魔法を使うことが出来る.」