ALEMBIC DISTILLATE (`80s)

 

もともとゼブラウッドとマホガニーのナチュラル仕上げで手工芸品的な木目の美しいギター。「もうフィルムの時代は終わりさ」ってNikonの8ミリカメラも手放して新宿石橋楽器で購入。衝撃的な出会いだったなあ。胴鳴りを極力抑えて、純粋な弦鳴りのみをピックアップするという逆説的発想の革命的エレキギター。この頃にはギター保守派からやや脱皮。ピックアップが一つなのも潔くて気に入ったし、機能的には多彩でサウンド作りのポテンシャルは高い。プリアンプとパラメトリックイコライザが内蔵されている。究極の一本、最後の一本になるはずが結果的には改造しまくることになる。紆余曲折はあったけど、ルックスは所有のギター中で一番気に入っている。このギターを持ってステージに上がるのが夢!

クリーンサウンドで鳴らした時、1弦の響きが他に比べてやや詰まるような気がした。そして、オリジナルのブリッジを無理矢理分解していじりだしたのが苦悩の始まり。ブリッジ駒を逆さにして新たに溝を削って装着しても改善なしで、いっそのことトレモロ式のブリッジ「ケーラー」に替えちゃえと決断する。ケーラーのローラーサドル・トレモロブリッジはボディー改造も少なくて済むし、ギブソン系のギターなどでは殆どボディー改造なしで装着出来、ケーラー仕様モデルも数種出回っていた。しかし、単体で買うには6,0000円もしてかなり高く、ショップで探してもなかなか売っていない。そんな時、ある不動産屋の前でワンルームオフィス「家賃7万円」が目にとまる。「ギターパーツとあまり変わらないじゃん」・・とんでもない飛躍をしてしまい、そこの不動産屋に飛び込んだ。「家賃7万円」は客釣りだったけど、勢いは収まらずだんだん欲も出てきて、結局ケーラー2個分のワンルームマンションに「オフィス・ヤナギ」開設。池袋東急ハンズから100メートルくらいのところだ。仕事にはとても便利なところで、それはそれで目出度い。このギターの役割はこれだったのかなと思うことにした。が、ギターの方も勢いが収まらないので妥協はしたが1万円くらいの国産ケーラーコピーモデルを装着した。それが良くないのかこのギターの苦悩は終わらない。トレモロを掛けるとサドルのローラーが軋むので、実戦には使用できない。さらに国産オリジナルのトレモロ・ブリッジに交換する。この時にはドリルとノミで結構ボディを削った。サスティンブロックの穴が見えてしまうので、自分で切り出したブラックのアクリルピックガードを装着する。トレモロは全くだめだったけど、ストップテールピースだと思えば問題はなかった。長らくこの状態であったが、銘木に縛られるのもいやだなとアーティスティックな野望が湧いてきて、ギターとして一番わくわく出来そうな赤にペイントすることを決断した。今度は使えるトレモロブリッジを絶対に付けるぞと、オリジナルフロイドローズを購入するはずが、何とフロイドローズライセンスの「ケーラー」を見つけてしまった。過去に買えなかったケーラー、フロイドローズのコピーのくせにオリジナルより高い・・が購入。

アレンビックには真ちゅう製サスティンブロックが入っていたため、ボディーには大きな穴があってフロイドローズのブリッジポストを打ち込む場所は限定されてしまう。あと数ミリブリッジ側に打ち込めば良いって事は分かっていたけど、強度を考えるとそれは無理なので、駒の位置調整でクリアーしようと考えた。結果は限界まで調整しても、5・6弦のハイポジションでどうしてもチューニングが高くなる。どうすれば正解だったんだろうか?サスティンブロックの穴を一旦埋木してから支柱を打つ?全張力の支点にそんなごまかしのような加工するのは性に合わない。

フレットレスギターにしたらどうだろう・・・今もなお苦悩は続いています。

穴あけ加工はルーターを使用してフリーハンドで行った。ハードロックメイプルとパープルハートのラミネートネックが貫通している。メイプルが固くて加工は意外と大変だった。ボディ厚がそんなにないのと、ネックの仕込み角度が緩いため、ブリッジポストを低く調整するとトレモロブロックが少し裏に突き出てしまう。黒いラバーのようなモノはそれをカバーするために装着した。適当にホームセンターで買ったものなので、本来の用途は全く知らない。