• 公立はこだて未来大学 >
  • FUNBOX > 市民の「足」のためにITができること スマートシティはこだてプロジェクト ―世界初の完全自動リアルタイムデマンド交通サービスへ―

funbox_header20140608

バスより早く、タクシーより安く

5f45e5179e901ea175aecc0eb832381c1-220x158中島学長みずからが主導する「スマートシティはこだて」プロジェクトは、次世代のより快適な公共交通システムの実現を目指し、バスやタクシーなどの公共交通を統合した新たな交通システムとして、「スマートアクセスビークル(Smart Access Vehicle:以下SAV)」を提案しています。現在のコンピュータの性能をフルに活かし、中規模~大規模都市の交通網をフレキシブルなネットワークに置き換え、定時運行バスよりも早くかつタクシーよりも安い値段で、乗りたい場所から降りたい場所へ移動することが可能になる。そんなバスでもタクシーでもない21世紀の統合型公共交通システムの実現を目指すものです。
“定時路線運行に利用者が合わせるスタイル”から、“利用者ひとりひとりの移動に運行側が合わせるサービス”へ――。SAVシステムは公共交通システムのあり方を変えるとともに、市民や高齢者、観光客にとってよりスマート(賢い)で魅力的なサービスと移動の連携などにより、利用者増に伴うまちの活性化までを視野に入れています。

不便と不採算、公共交通の課題にブレーキを

函館の現在の公共交通は路面電車、バス、タクシーとJRですが、市営バスは2003年に廃止となり、その運行は函館バス株式会社に引き継がれました。函館市の調べによると、外出でマイカーを利用する市民は約6割、通勤目的では約8割とマイカー依存度が高い一方、公共交通利用者は年々減少傾向にあり、特に路線バス利用者の減少が顕著、となっています。利用者にとって不便な(使いづらい)公共交通は敬遠され、運行収益も減少。マイカー利用の増大により渋滞が加速され、運行時間に遅れが出る。ますます不便になるバスサービスから利用者が離れる――公共交通の負のスパイラルは深刻です。市からの公的資金投入で何とか市民の「足」が確保されている、というのが現状です。

世界初の完全自動リアルタイムデマンド交通システムへ

SAVシステムの理想形では、全車両の運行状況をコンピュータにより集中制御。利用者が携帯電話やスマートフォンで、希望の乗降地点などの情報を入力すると、コンピュータが最適な配車方法・移動経路を決定し、各車両の端末に伝えて運行するシステムです。

こうした「デマンド交通」といわれる新しい公共交通システムは、日本国内でも海外でも、多くの都市で実用化が広がっています。従来のデマンド交通の多くは、1時間に1本、AエリアからBエリア方向など、だいたいの運行本数や方向が定まっていたり、乗降予約に締切時間があるなどの制約条件がありました。これに対して、SAVシステムはこうした制約をすべて取り除いた、完全自動リアルタイム配車を目指すものです。移動途中でも新しい予約をリアルタイムで受け入れて柔軟に経路を変え、利用者・運行車両の双方にとっての最大効率化を実現します。

phone_resized1 driver_tablet_resized
利用者向けスマートフォン端末画面例
利用者は専用アプリをダウンロード。乗りたい地点、降りたい地点を自由に指定し、デマンドを送信すれば、車両番号や待ち時間が返信されるほか、車両の走行状況を地図上で確認することもできる。
運転手向けタブレット端末の表示画面例
右側に乗客(赤)、降客(緑)が順番に掲示され、各乗降地点が地図上に表示される。運行途中に入ってきたデマンドも柔軟に受け付け、最適な車両に振り分けられる。

2013年、函館で実証実験をスタート

SAVシステムの有効性を確認するために2013年10月、本学と名古屋工業大学、産業技術総合研究所(つくば)の共同プロジェクトによる実証実験が、7日間にわたり函館市内で行われました。美原・昭和・亀田本町などを運行区域とし、小型車とワゴン車のタクシー計5台が運行。学生や市民ボランティアの方々が乗客となり、域内の自由な場所からスマートフォンに乗降希望場所や時刻を入力。SAVシステムが届いた情報をもとに最適な車両と運行経路を決定、指令を受けた車両が乗客を迎えに行き、目的地へ向かいます。今回は限られたエリア、台数、乗客数での実験でしたが、コンピュータによる完全自動配車で、どのデマンドにもおよそ10 分から最大でも20分程度の待ち時間でSAVを配車し、通常のタクシーがさばく乗車数の約1.5倍の乗車数を達成、今回、限定的な条件下ではあるものの、完全自動リアルタイム配車の実験に世界で初めて成功しました。

ph01_ ph02_
地図左上の青色部分が2013年秋の初回実証実験エリア。バス路線が比較的少なく、商業施設や病院、図書館等が点在する区域を選んだ。より広範な赤色の部分は2014年春のサービス学会国内大会(はこだて未来大で開催)参加者を対象に行われた第2回実証実験エリア。地域外からの参加者の移動に合わせ、空港―大学―西部地区を結ぶ市街地ほぼ全域を対象とした。 実証実験初日朝、まず協力先の函館タクシーで運転手さんの講習会を実施、車載のタブレット端末の操作方法などを説明。そして実験スタート、SAVステッカーを貼ったクルマが次々と街中へ。

利用者・事業者・行政の三方両得を実現

今後、都市の公共交通を統合的に運用管理するSAVシステムが実現されれば、利用者にとっても、バスやタクシーなど多分野の交通事業者にとっても、行政にとっても、三方両得のメリットが得られます。リアルタイムデマンド交通の高い利便性が実現されれば、マイカー利用者の減少、ひいては環境負荷削減にもつながります。高齢化で免許自主返納を余儀なくされる「交通弱者」にも朗報、また観光客にも市民と同様の利便性を提供できます。

SAVシステムは、医療、福祉、行政、商業、文化、教育、エンタテインメントなど、他の都市機能とのサービス連携も研究開発の射程に入れています。公共交通問題解決の枠を超え、コンパクトなまちづくり、都市機能の再構築にもプラスに作用する提案が可能です。函館からITで地域の公共交通のあり方を変えていこうという、ローカルだけれどもグローバルな構想、今後の動向に目が離せません。