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「リトファスゾイレ」とは

ユニークな円形の掲示塔が、この春から市内あちこちに設置されています。五稜郭築造150年祭の記念事業として実施されている「函館リトファスゾイレ/ヒストリア・ハコダディ」。掲示塔を含め記念事業のデザイン監修を担当された情報アーキテクチャ学科情報デザインコースの木村健一教授に詳細をお聞きしました。

――最近、市内各所で円筒形の掲示塔を見かけます。インパクトがありますね。

「ヨーロッパの街かどでよく見られる円筒形のポスターボード、リトファスゾイレをヒントに製作しました。リトファスゾイレとは、ドイツ語で円筒形掲示塔のこと。19世紀、ドイツで印刷業を営んでいたアーネスト・リトファスが発案したものです。ちなみにゾイレとは柱のこと。ヨーロッパでは壁面にポスターを掲示できないなど規制が厳しく、この規制が円柱形の広告塔を生み、まちの景観に独特の表情を与えています。伝統ある美しい都市景観を守り続けるヨーロッパの人々の思想や熱意は見習うべきところが多々ありますね」

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――円筒形の掲示看板は、日本ではあまり見かけませんが。

「今回の設置は国内初の試みです。構造体には、ボイド管という工事用の建築資材を採用しました。非常に強固な厚紙でできているんですよ。建築工事でコンクリート円柱を建てる際、このボイド管を型枠として中にコンクリートを流し込み、あとでボイド管をはがすのですが、強度・耐久性に優れているので、そのまま掲示塔に使えると着目したのです。今回の事業では、直径700~900mmの3種類のボイド管を使用しています。寸法を微妙に変えてあるのは、設置時と回収時に、マトリョーシカのようにスタッキングするため。施工した業者さんのナイスアイデアです」

あらためて函館を知る、知の装置として

――記念写真を撮ったり、情報に見入っている観光客をたくさん見かけました。

「掲示されている写真もテクストも一級のものなんですよ。編集には、函館の歴史的人物に造詣の深い方々に執筆いただき、写真は、はこだて未来大学・函館市中央図書館・市立函館博物館が共同で2007年から取組んでいる、収蔵資料のデジタルアーカイブ事業の成果を活用しています。また企業、団体、個人の方にご協力いただいたものもいくつかあります。円筒一つひとつが貴重な資料群なのです。五稜郭跡内の6基は、来年の2月末まで設置されていますが、市内各所の他の掲示塔は今年11月3日までの設置なので、この機会にぜひ見て回っていただきたいですね。市内17カ所に全30基設置、100名以上の歴史群像が紹介されています」

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――全30基をめぐると、意外な函館史に出会えそうです。

「観光に来られる方に函館の成り立ちを知っていただけると同時に、市民のみなさんにも、あらためて自分のまちの歴史を学べるよい機会になるかと思います。五稜郭タワーに土方歳三、五稜郭跡には武田斐三郎や榎本武揚、ジュール・ブリュネ、元町公園には田本研造、緑の島には新島襄など、ゆかりの地に人物群像が立ち、まち歩きや観光が立体的に楽しめます」

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紫をキーカラーに、さまざまなメディアと連動

――デザイン的なお話を伺いたいのですが、キーカラーは紫ですね。

「赤やオレンジ、黄色などの掲示物があふれるまちなかで、競合しない色、都市景観と自然環境に調和する色を考え、五稜郭の藤棚の美しさも意識した紫をカラーシステムのキーカラーとしました。同時進行で動いていたシンボルマークとの連動も図っています。シンボルマークは、「五稜郭築造150年祭」のシンボルマークコンクールで最優秀賞を受けた、大学院修士課程学生の蝦名奏子さんの作。ポスターを始めさまざまなメディアに使われているほか、市内各所にフラッグとしても掲示されているので、ご覧になっている方は多いかも知れませんね」

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――はこだて未来大は「社会をデザインする」研究や教育活動を実践していますね。

「リトファスゾイレを企画し設置するだけではなく、この取組みを研究として俯瞰するということが重要です。『デザインが街に出る』ということは、どういうことなのか。企画・設置にかかわるアートディレクションと同時に、研究者としては、『サービス科学』という領域でこの事業の概念、理論、技術、方法論を体系的に構築していくことを目指し、社会に貢献していきたいと考えています」

木村教授にお話をうかがった後、五稜郭跡、五稜郭タワー、西部地区へ足を運んでみました。多くの人が函館の歴史群像が展示されているリトファスゾイレに見入り、カメラやスマホで撮影。見上げると、五稜郭築造150年祭のフラッグが青空を背景にはためいています。 “みらい系”のデザインに出会う、観光シーズンの函館。秋までに全30基の「ヒストリア・ハコダディ」を制覇してみたくなりました。

「函館リトファスゾイレ」の設置場所や内容、「五稜郭築造150年祭シンボルマーク」についての詳細はこちら

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