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幕末期、いち早く諸外国に向け開港された港まち函館。北海道のなかでも特異な歴史を持つ函館には、古くから新しい風を取り入れる進取の“窓”が開かれてきました。オープンマインドで外交的な港まちの性格は、独自の祭りやイベントで触れることができます。今回のFunBoxは、祝祭都市の現場で活動する公立はこだて未来大学のアクティブな“知”の楽しさ、豊かさ、広さを探ってみましょう。

 

IKABO with 「函館港まつり ワッショイはこだて」

8月2日、日中の蒸し暑さが一息つく日暮れ時、祭りの熱気がまちを包み込もうとしています。「函館港まつり ワッショイはこだて」は、毎年2万人の市民がそれぞれの衣装をまとい「函館港おどり」や「函館いか踊り」を披露しながらパレードする、函館の夏の風物詩。集合場所の十字街銀座通り付近には、参加チームが続々と集結。山車のスピーカーから響く大音量の「いか踊り音頭」が祭り気分をガンガン盛り上げます―― 函館名物いか踊り♪ イカ刺し、塩辛、イカソーメン♪ もひとつおまけに、イカぽっぽー♪

未来大のIKABOチームも到着。「なんとか持ちそうだね、天気」、担当の松原仁先生(複雑系知能学科)が雨が落ちて来そうな空を見上げてIKABOを操作する学生に声をかけます。精密機器であるIKABOに雨は大敵。「少々の雨だとシートをかけてしのぐんですが、本格的な雨となれば撤収ですね」と、松原先生。

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学生たちとIKABO誕生から支援していただいている「ロボットフェス・インはこだて 市民の会」の会員の方たちが、IKABO山車のセッティングに着手。パソコンを操作して、動きもチェック完了。山車に載った全高2mのIKABOが一回り大きく見えます。準備が整ったところで、お揃いの真っ赤な未来大法被(はっぴ)を羽織った学生たち。いざ出陣です。

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「函館港まつり」は、昭和9(1934)年の函館大火で大きな痛手を受けた市民に復興への希望と意欲を奮起してもらおうと、翌年の昭和10(1935)年に「開港記念日」の制定とともに開催されたのが始まりです。第一回の祭りで「函館港おどり」ができ、昭和56(1981)年には市民の有志が考案した「函館いか踊り」が登場。開港156周年を迎えた今年のパレードには、初日の十字街・松風コースに65団体、9000人、山車54台(2日目の堀川・五稜郭コースには74団体、約12000人、山車59台)が参加しました。

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プロジェクト学習(詳細はFunBox2015年9月公開)の一環で編成された未来大のIKABOチームは、平成19(2007)年の「函館港まつり」から参加。市民みんなの人気者らしく、デジカメやスマホを向けられ、子どもたちから声援を受け、今年も得意のいか踊りを披露したIKABO。伝統の祭りに新風を吹き込んできた函館観光振興ロボットですが、来年3月には待望のIKABO11号機が完成予定。全高約4mの大型ロボットが祭りをさらなる新風で盛り上げてくれることでしょう。

 

市民とともに科学を楽しむ「はこだて国際科学祭」

8月の最終日曜日まで9日間にわたって開催された「はこだて国際科学祭」。五稜郭タワーアトリウムをメーン会場に、函館市内および七飯町各所で今年のテーマ「環境」について、科学の魅力や楽しさに触れるイベントやワークショップが実施されました。主催者である「サイエンス・サポート函館」は、函館の行政機関、高等教育・研究機関、公的支援機関によって組織され、運営委員と市民有志によるサポートチームで活動を展開しています。

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「サイエンス・サポート函館」代表である未来大の美馬のゆり先生(情報アーキテクチャ学科)に「はこだて国際科学祭」のこれまでとこれからを伺ってみました。

――科学のお祭りというのは、とてもユニークなアプローチです。

「科学祭は平成21(2009)年の夏に始まりました。科学を難しい勉強としてではなく、文化として楽しみながら多くの市民に理解してほしい、そのためには“祭り”という手法が最適だったのです。科学を大学の研究室のようなところに閉じ込めておくのではなく、“まちに出し”、みんなで新しいことに触れ、語り合う。もっと大きな視点で見るなら、足元にある課題を認識することは、世界で起きていることに目を向けることであり、さらにはよりよい地球市民になることにつながります。科学を楽しむことにより、函館だからこそできることの発見や知恵を世界に発信することもできるのです」

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――函館から未来モデルを発信できるのですね。

「科学祭は市民に開かれた新しい学びの場、学びの祭りです。ほかのまちでも応用できるようノウハウをまとめ、科学祭モデルをつくって共有していきたいのです。そのためには、10年、20年と続けられる仕組みづくりと、私たちらしさ・函館らしさをしっかりつくりあげていくこと。最も重視したのは人材の育成です。平成23(2011)年には『サイエンス・サポート函館 科学楽しみ隊』という市民ボランティア組織も誕生しました。非常に熱心な方たちの輪が広がり、未来志向の催しと地域への愛着が合致した理想的な関係なのではないでしょうか」

――学生たちも出展、日頃の研究成果の貴重な発表の場でもありますね。

「そうですね、発表の機会であると同時に市民とコミュニケーションを図れる場でもあります。この“つながり”がとても重要です。学びは受け身の一方通行ではなく、人を巻き込み、社会とつながることで広がりと深さが増していきます。予想外のつながりや展開がある豊かなコミュニケーションにこそ、学びの本質があるのです。そのために大学内に留まらない、多様な人々とのコミュニケーションが生まれる場として、お祭りに勝るものはありません」

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今年で7年目を迎えた「はこだて国際科学祭」の実績は数字にもあらわれています。延べ入場者数1万3000人、プログラム数33、出展・共催数97はいずれも過去最高を記録。未来大からは、プロジェクト学習の「函館発新体験開発プロジェクト」「未来大FabLab函館β」がチームとして参加し、多くの市民が科学と触れ合うことになりました。

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「環境」「食」「健康」の3大テーマを毎年巡回して開催する「はこだて国際科学祭」。来年2016年は、「食」がテーマです。「食」の新たな国際的な枠組みTPP、世界に向けて発信したい函館ならではの「食」、生活のなかの「食」を市民目線であらためて考え、学び合う一年になりそうです。年が明けて早々キックオフイベントを実施、「はこだて国際科学祭2016」が動き始めます。

 

「道南フェスティバル」でのプロジェクションマッピングから

プロジェクションマッピングとは、英語のProjection(投影)とMapping(映像を投影対象に張り付ける)という単語を合成した造語。手軽な高輝度プロジェクターが現れてきた2000年代から、祭りやイベントなどで実施され、集客力のあるキラーコンテンツとして世界中で話題を集めるようになりました。函館初のプロジェクションマッピングは、平成25(2013)年9月の「道南フェスティバル」(函館青年会議所主催)のフィナーレで披露されました。

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制作は、未来大の迎山和司研究室と・川嶋稔夫研究室(情報アーキテクチャ学科)が担当しました。函館の四季ストーリーが、まばゆい光の点滅とともに、国の重要文化財である旧函館区公会堂に次々と投影されていきます。春の桜、夏は花火、そして回遊する魚やイカ。公会堂の扉が開き、紅葉が舞い散るシーンに金森倉庫群やイカ釣漁船がフェイドアウトする秋に続いて、クライマックスは冬。「はこだてクリスマスファンタジー」をイメージする画像が投影され、BAYエリアに輝く巨大ツリーが現れエンディング。シーンが切り替わるたびに聞こえてくる会場のどよめきと歓声が、感動の大きさを伝えています。同フェスティバルの観客動員数は前年が2000人、プロジェクションマッピングが実施されたこの年は9000人もの人々が来場されたとのこと。「プロジェクションマッピングによって、新たな魅力が加わったのかもしれませんね」と、迎山先生。

衝撃的ともいえる道南フェスティバルでのプロジェクションマッピングデビューでしたが、平成26(2014)年の「市民創作 函館野外劇」でも、高さ5mほどの巨大バルーン製の中空土偶にCG映像を投影するという作品を披露し話題となりました。祭りやイベントを盛り上げるプロジェクションマッピング、その後の研究室の活動を迎山先生に尋ねてみました。

SONY DSC「研究面においては単にイベントで派手に実施するだけではなく、歴史的文化財の博物情報をプロジェクションマッピングの手法によって投影し、新しい展示方法を提案していくことも価値があるのではないかと思っています。“文化財に命(ひ)を灯す”というテーマで研究を進めていこうと考えています。試験的に今年1月に北海道指定の有形文化財である旧函館博物館2号で、当時(大正時代)の姿を投影により忠実に再現してみました。

続いて実施したのが、北海道唯一の国宝である中空土偶(3Dプリンタで出力したレプリカ)への投影です。文献などから得た情報を、音声に連動した映像とともに映し出していく。たとえば――現在は土色ですが、縄文時代は真っ赤な漆色だったと考えられています――というガイダンスとともに赤色を中空土偶に投影する、というふうに。重畳(ちょうじょう=重ねる、畳み込む)することのメリットは、耳で聞く博物情報と視点が一致することです。

さらにこのときには、鑑賞者が懐中電灯型の赤外線投光機を用いて任意の場所にライトを当てると、音声ガイダンスと映像が同時に流れるというインタラクティブな試みにも挑戦しました。展示中に評価実験も実施したところ、映像を複数回鑑賞する自発的な行動が見られました。細部をじっくり鑑賞している、ということですね。より深く鑑賞することを促すという点からも、文化財とプロジェクションマッピングの相性はとてもよいのです」

2015 年夏には、市立函館博物館の企画展示で実現。この企画展示では函館市北方民族資料館の貴重な収蔵品であるバイダルカ(北方民族が使用した古代カヌー)に、音声・インフォグラフィックスなどを用い、博物情報を投影しました。また「だて歴史の杜カルチャーセンター」では、伊達市に遺されている甲冑の博物情報を利用し、ペーパークラフトの甲冑模型に 16 種類の甲冑の質感(テクスチャ)の映像を投影するプロジェクションマッピングなどを実施。祭りの現場から枝葉を広げた研究は、活動の場を広げつつ、継続的に展開されています。

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(研究成果は「YouTube 函館プロジェクションマッピング」などで検察すると、公開された映像を観ることができます)

未来大の知が交流する祝祭の現場は、コミュニケーションがスパークする刺激的な現場ともいえます。人と人、人と社会、人と歴史…この地ならではのコミュニケーションをさらに豊かに。“祝祭都市”函館とともに、道南圏に根ざす大学は、文化の層をさらに厚く、熱く、盛り上げます。

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