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英語やプログラミングと並んで、未来大生に必要とされているリテラシーのひとつ、「数学」。
高校までに学んできた知識を土台に、より高度になる「大学で学ぶ数学」とは、どんなものなのでしょうか。そして、難解な数学を使いこなせるようになった時、どんな世界が開けてくるのでしょうか。
今回は、そんな未来大生にとっての数学リテラシーの内容と展望を、前段では数学担当の高村博之先生に、後段ではプロジェクト学習の「未来大における数学学習環境のデザイン」に携わっている4名の先生に座談会形式でお話を伺いました。

高村先生に聞く。そもそも「数学」って何ですか?

高村先生は、偏微分方程式論を専門に研究されている数学者であり、未来大では学部1~3年生・大学院生を対象に、解析学などの数学の授業を担当しています。また、数学に関わる卒業研究を行う4年生や大学院生のゼミ指導も、並行して担当されているのだそうです。

―高村先生が考える「数学」とは何でしょうか?

数学は、自然科学を記述する言語です。目の前で起こっているあらゆることは、数式で表すことができる。そして、数学で証明していることは、数式を使わずに言葉だけで表現することもできます。ただ、数式を用いて説明すると、非常に正確になります。
例えば、容積の大きい物どうしの「距離が近い」と言うとき、どこを起点として、どのように測った距離を言っているのかあいまいですよね。それが数学では厳密に定義されているので、正確に人に伝えることができるのです

―未来大で学ぶ数学は、どんなものですか?

高校で学ぶ数学というと、大学受験を控えているため、公式を覚えて問題を解くことを重視しているように思います。ですから、正しい答えは導き出せるけど、「どうしてそうなるのか」はわかっていない。しかし、高校の教科書を端から端まで読むと、公式の証明がきちんと書かれていて、どうしてそうなるのか説明されているんです。その部分の理解を飛ばしてしまうのは、もったいない気がしますね。
一方、大学における数学というのは、「なぜこの答えが出てくるのか?」その原理を知っていないといけない。
例えば、自動車は「なぜ動くのか」その仕組みがわからなくても運転する分には不自由はありません。でも、もしも壊れた時はどうしますか?自分で処理することができず、何かに頼らざるを得ないでしょう。
大学では、「あなたは何を行ったのですか?」という説明を常に求められます。それに対して「公式にあてはめました」では「ほとんど何もやっていないですね」ということになる。
答えを間違えたときに、単純なミスなのか、本質的な間違いなのかもわかりません。
大学は、未知の物事を研究対象にするところですから、その姿勢では無理があります。
答えがないもの、道がないところに道をつけることをやっているので、自分の使っている道具が正しいか常にチェックする。そのために数学が使われます。

数学の問題というのは、到達目標である答えはわかっているものの、それを証明する方法がわからない、というものがほとんどです。
ですから試行錯誤して、この方法で試して「だめだった」ことがわかるのが大事。そして、最終的には自分で公式を作っていく。この公式が、研究の成果を検証する際の道具になります。自分で公式を作るためには、様々な公式や知識を組み合わせていくことになりますが、実はその道具には高校で学習する内容の数学が多いんです。高校で習う、すべての範囲をくまなく使いますね。大学に入ってからの学習の大事なベースになります。

―高校までの間に、「数学の学び」について、どういった意識が必要になると考えられますか?

やはり、なぜこの答えが導き出されたのかという証明も意識しておいたほうがいいと思います。「急がば回れ」で、最初は時間がかかっても、意味が理解できるといろんなパターンの問題に対応できるので、実は早いんです。ちょっとした変化球にでも対応できる。
学生を見ていると、問題を見てすぐに解こうとする傾向があります。その前にじっくり数式を見て、性質を把握し、「自分の持っている知識のどれを使えばいいか?」判断するということができていない。
難しい問題であっても、単純な問題の組み合わせで構成されているので、それをほぐす作業が必要になります。全体を見渡すことですね。そして、そのほぐす鍵となるものは、今まで習ってきたことの「どこか」に必ずあります。ですから、まずは教科書をよく読んでほしいです。

―未来大での数学授業の科目・方針・サポートについて教えてください。

解析学の授業では微積分について、数Ⅲを発展させたような内容を学びます。また、専門コースでは微分方程式の授業もあります。例えば空気中で音がしたら、その音の伝わり方を微分方程式で表現できるという具合に、世の中のいろいろな現象は微分方程式で表すことができるので、それに近い勉強をします。

未来大の方針としては、学生が「自分の頭で考えて、手を動かして事実を確認すること」を主眼に指導しています。

そして、数学に対するサポートですが、数Ⅲの特別講習とメタ学習ラボでの支援を行っています。未来大の入試では、数Ⅱ・数Bまでの範囲は必修(AOの一部は別)、数Ⅲについては選択となっています。ですから、実際に数Ⅲを学ばずに入学してきている学生もいるわけです。そういった学生を対象に、高校の先生を講師に招いて特別講習を行っています。メタ学習ラボでは、先輩チューターが一緒に考え、数学に困難を感じている学生が自分の力で数学を学んでいけるよう支援をしています。さらに、2015年からスタートしたプロジェクト学習のテーマ「未来大における数学学習環境のデザイン」で、3年の学生たちが1年生向けの数学のweb教材「ますますたでぃ」を開発しているところです。

座談会:未来大の学生に求められる数学スキルとは?

~「未来大における数学学習環境のデザイン」プロジェクト学習のおハナシ

<座談会参加者>

  • 美馬義亮教授(情報アーキテクチャ学科)
  • 高村博之教授(複雑系知能学科)
  • 香取勇一准教授(複雑系知能学科)
  • 冨永敦子准教授(メタ学習センター)

―「未来大における数学学習環境のデザイン」というプロジェクト学習のテーマがスタートした背景を教えてください。

美馬:それまで、小学生や高校生に向けた数学教育のプロジェクトに関わってこられた高村先生に声をかけて、「未来大生のための数学教育プロジェクトを」と提案しました。2015年、新任で来られた数学担当の香取先生や、学習支援の観点で冨永先生のプロジェクトの前任であるメタ学習センターの大塚先生に参加していただき、プロジェクト学習をスタートさせました。
私はプログラミングを教えていて、学生が苦労している様子を見ていますが、「どうも数学についても共通したことが言えるようだ」と感じました。それは、学生たちができる限り短時間で答えを出そうとするため、表面的な理解にとどまり、「自分の言葉で説明できる」という深い意味での理解ができていないように思えたのです。

―プロジェクト学習で開発している、web教材『ますますたでぃ』とは、どんなものですか?

高村:数学の教科書は、語学の辞書のようなものです。学生によく読んでほしいので、web教材は教科書を探検するための補助的な位置づけだと考えています。
私と香取先生は、学生が『ますますたでぃ』の中で間違ったことを教えないように、コンテンツの正確性を指導する役割をしています。まずプロジェクト学習に取り組む3年生、つまり『ますますたでぃ』を製作する学生たちに講義を行うのですが、いざ自分で数学の問題を解いてみると、なかなか正解にたどり着けない…彼らも理解が浅かったということですね。


美馬義亮教授


高村博之教授

 

美馬:教材の特徴としては、単純に問題を出して正解を提示するという問題集ではなく、「間違った理由が何なのか」を見つけ出せるようにしています。

冨永:実際に1年生に使用してもらってみた後、「数学の解き方がわかるようになりました」という声を多く聞きました。アンケートでは「解答の書き方や流れを最初から終わりまで理解できた」「解答までの道のりを学べるので、自分の中で確かめながら解けた」「間違えたときにどこを復習すればよいのかわかりやすかった」「各問題においてチェックテストの形式でその問題で使う技法に関する解説が行われていたので、その問題をどのように解くかの流れを組み立てることができた」といった感想が寄せられています。

―数学と工学、必要とする「数学力」に違いはあるのでしょうか?

香取:数学と工学では、必要な数学は違ったものになると思います。未来大の学生でもコースや専門分野が変われば、数学の使い方も変わってきます。例えば、感染症の広がりや渋滞が起こる仕組み、人工知能、電気回路、情報通信など様々な問題が、数学を表現手段として使って研究されています。それでも、基本となる部分は共通しています。ですから、1年生で学習する解析学・線形代数は、どの分野へ進んでも必須になる基礎的な内容です。学年が上がるにつれて、その基礎的な内容を組み合わせて自分の問題に取り組むことになっていきます。


冨永敦子准教授


香取勇一准教授

 

美馬:数学という学問は、分け入っても分け入っても、未知の部分が残るのが魅力。数学を学ぶ体験は、物事をどこまでも深く、正確に学ぶ学習態度を身に付けるために必要だと思います。

冨永:論理的に説明することは、文章を書くことも同じ。「数学的な思考」を学ぶことは、いろんな分野に活かされていくと思います。

―未来大のこれからの数学学習の展望は?

美馬:プログラミングなどでも言えることですが、「短い時間で理解してできるようになろう」とすると、大事な部分を飛ばしてしまいます。専門用語を自分の言葉で説明できるぐらい、ひとつのコンセプトをきちんと理解して次に進むようにしてほしいと思います。

香取:学生が主体的に勉強する仕組みがもっとあっても良いと思いますね。授業でやっているだけでは足りないと思うので。私自身が学生だった時を振り返ると、趣味のような感覚で、自分で「面白い」と思える問題を見つけて数学に取り組んでいました。

―今後未来大へやってくる高校生に向けて、メッセージはありますか?

冨永:未来大では、学生さえやる気になれば、純粋数学から応用数学まで、幅広く学ぶことができる体制が整っています。「数学を深めたい」という人に、ぜひ来てほしいです。


「未来大における数学学習環境のデザイン」プロジェクト学習の様子

高村:教科書は、宝の山です。じっくり味わって来てください。

香取:まずは、しっかり勉強に向き合ってください。そうすると、「勉強も面白いんだ」ということに気づくと思います。また、雑学的興味から数学に入るケースがあってもいいのかもしれません。「脳の構成要素である神経細胞の活動を数学的に表現して、数学を使って脳の研究ができる」とか「がん細胞の成長を数学的に表現して、病気の進行を予測したり、抑えたりすることができる」なんて聞くと、数字と記号の羅列で敬遠したくなる数学の中に“へぇ~”と面白さが見えてくる高校生もいると思います。

美馬:数学の問題でつまづいた時は、問題を構成する言葉の一つひとつを本当に理解しているか、確かめてみてください。わからないと思ったら、1年前、2年前に習ったような、より基本的な概念にもどってみる。そして、用語の定義をさかのぼり、練習問題をいくつも解いてみて、問題が問いかけていることを図解できるだけの理解力を持っているかどうか確認してみましょう。数学は、積み上げていく学問なので、簡単だと思うことを着実に理解していけば、恐れることはありません

「大学で学ぶ数学」と聞くと、最初は臆してしまいそうですが、先生たちの言葉から実は基本の積み重ねだということがわかります。すぐに結果を出したくなる、答えを急いでしまう気持ちは誰しもありますが、じっくりとその本質を味わうつもりで数学に向き合うと、これまでとは違った世界が見えてくるかもしれません。まず、数学を楽しむこと。未来大はそんな数学ボーイ&ガールを持っています。
 

 

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