公立はこだて未来大学(以下・未来大)の学生の男女比は8:2。圧倒的に女子の少ない環境です。そのような女子が少ない環境の中でも、未来大の女子学生はのびのびと充実した大学生活を送っているように見えます。今回は学部生から大学院生まで、女子学生3名に生活のこと、勉強のこと、将来のことなど、ホントのところを聞いてみました。

システム情報科学部情報アーキテクチャ学科
高度ICTコース 3年 林友佳さんの場合

1年生の授業で感じたプログラミングの面白さと達成感。
自身の成長のため高度ICTコースへ

林さんは網走南ヶ丘高校出身。未来大に入学したときはどのような心境だったのでしょう。

中学生のときにインターネットの仕組みに興味を持ち、情報系に進もうと思いました。入学当初は女子が少ないので心細いなと思ったのですが、少ないぶんクラスの垣根を越えてどんどん友達の輪が広がったのはよかったです。予想以上に明るくておしゃれな人が多くて、最初はまぶしく感じましたが、さっぱりとした性格の女子が多くてつきあいやすいと思いました。

印象的な授業について尋ねると、林さんは1年次の必修科目「情報表現入門」の演習をあげました。

初めてプログラミングに触れた「情報表現入門」の演習が印象的です。この授業では実際にブロック崩しゲームとスケジュール管理のアプリを一人でつくります。入学後まもなくブロック崩しのゲームをそれぞれでつくり、クラスで投票して一番評価の高い作品が代表として選ばれ、学年全体での発表会が行われます。高校でプログラミングを学んできた人も多いので、経験者が選ばれるのかと思ったら、大学から始めた初心者の作品も選出されていて…。私も頑張ろうと、授業時間外もプログラミングを勉強して、次のスケジュール管理のアプリをつくったときはクラス代表に選ばれ、それまでにない達成感を味わうことができました。やればできるんだ、と純粋にうれしかったですね。

3年次に、大学院への進学を前提にした「高度ICTコース」を選択した林さん。同コースは同学年9人のうち女子1人という環境です。

高度ICTコースは、他のコースとは違って最初から大学院への進学を前提として6年間一貫で学べるコースです。その決断の根っこには、やはり1年生の時のスケジュール管理アプリ作成での達成感があったのだと思います。この道で、もっと自分を成長させたいという意志が芽生えました。なかでも大きく成長を促してくれるのが「高度ICT演習」。学部生から大学院生までがプロジェクトチームをつくって、システムやアプリの開発を手掛けます。技術に明るい同級生や尊敬できる先輩方と一緒に学ぶことができるので、成長できる機会が多いと感じます。
私は「はこだてSweets」のチームに所属していて、函館市経済部や函館スイーツ推進協議会と話し合いながら、市民や観光客がモバイル端末で好きなスイーツを探し、ショップまでたどりつけるようなアプリを開発中です。アンドロイドとiOS担当に分かれて、リリースの準備をしているところです。
今は技術や知識を吸収し、いろんなことに挑戦している段階なので、将来の進路はまだ絞り切れていません。業種や職種の志望もまだ決まっていませんが、人に見てもらえるような何かをつくりたいという気持ちは、ずっと変わりません。これから大学院も含めコツコツ努力しながら、自分のやりたいことを突き詰めていきたいと思います。


林友佳さんは動画をつくるのが趣味。大学祭のPR動画をつくってYouTubeにアップしたり、「デザイン・カルテット部」に所属してイベントなどのチラシやサイトのデザインを手掛けたり、幅広く活動しています


システム情報科学部情報アーキテクチャ学科
情報システムコース4年 笹原悠莉さんの場合

女子校から未来大へ、そしてこの先のキャリアへ。
企業との共同研究も魅力

山形西高校出身の笹原悠莉さん。高校は女子校だったので、入学前は不安だったそうです。

未来大に入学すると、当然のことですが女子高とは雰囲気がまるで違いました。最初は少し戸惑ったのですが、すぐに不安はなくなり、抵抗感なく大学生活に入ることができました。女子の人数は少なくても、同じ学年の女子はみんな友達。少ないから団結しているという感じです。

未来大で学んで3年半。笹原さんは「コミュニケーションを学べるのが未来大の魅力」と感じています。

プログラミングなどの技術だけではなく、コミュニケーションやチームワークを学べるのが未来大の特色であり、いいところだと思います。
なかでも役に立ったと思うのが「プロジェクト学習」です。私のチームは数学の学習支援のためのアプリをつくったのですが、メンバーで協力しなければ進まないので、マネジメントや企画力が自然に身についていきます。
もうひとつは「コミュニケーション」の授業です。未来大はコミュニケーションスキルの向上を重視していて、グループでの討論の仕方、プレゼンの仕方、資料の作り方などを英語による授業で学びます。ビジネスに直結しているので、就職活動でもそこをアピールしました。

就職活動を終えたばかりの笹原さん。第一志望の企業から内定を得ました。

当初は大学院に進もうと思っていたのですが、学部3年生のときに学内で開催された企業の説明会に出てみたら、興味がわく企業に出会って…。東京で行われたハッカソン(短期間でプログラムの開発を競うイベント)やインターンにも参加して、働きたいと考え始めました。いくつかの企業の話しを聞いた上で入社を決めたのは「@cosme」というサイトを運営している株式会社アイスタイルです。エンジニアとしてスタートしますが、将来的にはプロジェクトを企画してマネジメントしていけるようになりたいと思っています。

いまは卒業研究に取り組んでいる真っ最中。大手企業とのコラボレーションで、実用的な研究を進めています。

食べるのが楽しくなる子ども向けの食育フォーク「pacoo(パクー)」を、株式会社博報堂と共同研究しています。pacooは、子どもが食べ物を食べるタイミングに合わせて音が流れる食育フォークとアプリで構成されています。研究の内容は、3~5歳くらいの子どもたちを対象に、どのような音だと食べるモチベーションが刺激されるのか、評価実験を行うことです。東京の博報堂の担当者とはビデオ通話で打ち合わせをしていますが、実験がうまくいって、製品化されたらうれしいですね。こうした企業と連携した研究が多いのも、未来大の魅力だと思います。


「プロジェクトのリーダーも、できる人はできるし、できない人はできない。男だから女だからは関係ない」という
笹原悠莉さん。小学校から大学までずっとバドミントンを続けています


システム情報科学研究科
博士(前期)課程2年 熊木万莉母さんの場合

東京の都会っ子が函館の大学に、そして大学院へ。
想像以上のチャンスと恵まれた研究環境が自信に

東京生まれの熊木万莉母さん。未来大に進んだのは親の薦めだったそうです。

前期日程で志望校の受験に失敗したんです。親がIT分野の仕事をしているので、「業界で注目されている大学が函館にある」と教えてくれました。私立大学は受かっていたのですが、実家から遠い大学で一人暮らしをしてみたくて、後期日程で合格して入学を決めました。それまでは未来大の名前も知らなかったし、函館の第一印象は「うわあ、田舎だなあ」と。そういう経過なので、強い意志を持って入学したわけではなかったのですが、システム情報科学を専門とする大学で学生の人数も多くないせいか、先生方の面倒見がよく、結果として大正解というか、実りのある大学生活になりました。

現在はシステム情報科学研究科メディアデザイン領域 博士(前期)課程に在学中。大学院に進もうと思ったのはなぜなのでしょう。

理系だから大学院に進むのは当たり前と考えていて、当初は他大学の大学院入試を受験するつもりでした。でも、未来大の先生方がとても親身なので、このまま指導教員である平田圭二先生、竹川佳成先生のそばで研究を続けていきたいと思い、未来大の大学院を志望しました。

学部時代から熊木さんが取り組んできた研究は、ゲームと教育を組み合わせた「ゲーミフィケーション」の分野だそうです。

本来、研究室に入るのは学部4年生になってからなのですが、私はどうしても早く研究を始めたくて3年生の段階から着手させてもらいました。ゲームを使った楽器の練習の研究です。
私は小学生のときからバイオリンを習ってきたのですが、ゲーム感覚で練習できたら楽しいのにな、とずっと思っていました。それで、正しい指の位置を提示する正解モード、複数の選択を提示する選択モード、あえて嘘をつく虚偽モードと、3つのモードを使い分けて練習できるアプリを開発し、モードを使い分けながら学習すると練習の効率がどうなるのかについて研究をしました。ゲームと教育を掛け合わせた「ゲーミフィケーション」が世界的に注目されていることもあり、学部4年生のときにカナダのバンクーバー、博士(前期)課程1年のときに中国の上海と、国際会議で2回、発表の機会にも恵まれました。ジャーナル論文への採択も決まりました。こうした結果は大きな自信にもなりました。

国際的な学会で発表の場を与えられるのは、そうないこと。熊木さんは「未来大で学んでよかった」と感じています。

未来大は、先生方にいつでも気軽に質問できる雰囲気が好きです。私が「VR(バーチャル・リアリティ)の研究をしたい」と言うと、東京大学の研究室を紹介してくださって、夏休みに1カ月ほど東京大学大学院の研究室で学ぶこともできました。よその大学に行くと、研究室はドアで仕切られているのが当たり前で、ほかの研究室で何をやっているか分からない。あらためて未来大のオープンな環境の利点を感じました。

熊木さんは学外でも多彩な活動をしています。首都圏から離れていても、ネット環境が整備されていれば不利は感じません。

主にゲーム制作をしています。いろんな大学の人とチームを組んでRPGゲームをつくって夏コミ(8月に開催されるコミックマーケット)などのイベントで販売したり、ゲームの勉強もかねて普段やらないゲームに挑戦して、その様子をネットの生放送で配信したり。その延長で動画編集や3Dモデリングの勉強もしています。未来大は情報全般を扱う大学なので、私のようにゲームについてもっと専門的な知識を得たいと思ったら、授業以外でも積極的に学ぶ姿勢が大切だと思います。

就職も株式会社ディー・エヌ・エーに内定。来春からゲームプランナーとして働く予定です。

学部1年生のころから、ゲームの最後のスタッフロールに自分の名前を載せたいと思うようになりました。いつか自分の企画したゲームを実現させるのが目標です。私にとって未来大は「なにかをつくってみたいという気持ちを尊重し、かなえさせてくれる大学」でした。もともと何の特技のない私でも、ゲームをつくれる、デザインができる、プログラミングができる、動画を編集できる、3Dモデリングを勉強している、アニメーションがつくれる、ゲームプランナーとしてチームでの開発を競うイベント「ハッカソン」の経験がある…と、さまざまなスキルを身に付けることができました。寝食を忘れて制作に没頭しちゃうような仲間がいるのもうれしかったです。
入学当初の印象からすると、想像以上のチャンスと恵まれた研究の環境があったんだなと感じています。


東京の富士見中学高等学校卒業の熊木万莉母さん。
「男女の垣根があるのは最初だけ。すぐにごちゃまぜになって、なんの遠慮もなくなる」と言います。


今回のFUN BOXでは、3人の女子学生にお話を聞きました。
林さんは「男女問わず仲間という感じで、分け隔てはない」と感じ、熊木さんも「女子の人数が少なくて不利なこともなければ、優遇されることもない」と同意見でした。
「情報系大学で学んだ女子は少ないので、就活では情報系の知識を持った女性の視点が求められているように感じた」と言うのは笹原さん。
3人のお話に共通しているのは、男性、女性ということに関係なく、自分のやりたいコトや進みたい道を、大学の学びや研究の環境を活かし、時には上手に利用しながら見つけていくことの大切さでした。

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