令和4年度公立はこだて未来大学大学院 理事長・学長式辞(10分間)
公立はこだて未来大学大学院入学者・進学者のみなさん、
入学・進学おめでとうございます。
歓迎と、そしてお祝いを申し上げます。
保護者・ご家族の皆様にも心からお祝いを申し上げます。
大学院は、それぞれの専門領域の知識を深めると同時に、研究活動に専念する場所です。
みなさんそれぞれが、独自の研究テーマを選び、それを追求します。
各自のテーマを掘り下げる、一つのことについてずっと考え続ける、
そういうことができる貴重な機会です。
私はこれまで大学院入学者にはこの没頭する時間ということを良く申し上げてきました。
今日はもう一つの大切なことについてお話しします。
それは国際的視野です。
今、世界は大きな変化の中にあります。
Pandemic (COVID-19) は世界中の人々の生活を一変させました。
感染によって多くの人が亡くなり、感染拡大に伴う医療の逼迫や感染に対する
不安とストレスに今でも人々は悩まされています。
人間同士の触れ合いもオンラインに移行しました。
COVIDに対する対応は世界中の国々でさまざまです。
情報技術の適用についても国ごとに違いがありました。
日本は感染者数は比較的少なく抑えています。
しかし、各種対策については後手に回ったという印象があります。
世界は既に新たな変異株の登場や新たなpandemic出現に対する備え、
それに情報技術がどう貢献するかという方向に動いています。
気候変動・地球温暖化はいよいよ待ったなしの情勢です。
2月28日に国連IPCCの第6次レポートが発表されました。工業社会到来前の水準から
1.5Cの気温上昇に抑えられるかどうかが本格的に焦点となっています。
Bill Gatesは2年くらい前にgreen premiumという概念を提唱しています。
現在の生産手段とCO2排出ゼロの生産手段とのコスト差を指します。
発電や自動車のように特定の産業に限定してCO2排出削減を目指すのではなく、
あらゆる産業においてgreen premiumを求めて、それをゼロに近づける政策と
技術開発を進めようという考えです。
2月24日に始まるロシアによるウクライナ侵攻は、私たちが当たり前と考えていた、
民主主義・法による統治・人権尊重のような現代社会の原理をひっくり返してしまいました。
民主主義は、武力による領土争奪という19世紀に遡る帝国主義との戦いに直面しています。
その中でも、ウクライナのゼレンスキー大統領は現代の情報技術を代表するsocial networkを
十全に活用して世界中にアピールを続けています。
私が学生の時代には国際会議のために海外に出るという機会はほぼありませんでした。
そのような中でも、日本国内で開催された国際会議に参加して、
外国の研究者の講演を聞き、世界が広がった思いを抱いたことを記憶しています。
現在みなさんが海外の研究者と交流するチャンスは格段に広がっています。
それぞれ自分の研究に没頭すると当時に、今世界で何が起きているのか、
どちらの方向に世界は動いているのか、その中で自分は何ができるのか、何をすべきか、
そのような視点を持ってみることの大切さを少しでも心に止めておいてください。
以上をもって、私からのみなさまへの大学院入学のお祝いと歓迎の言葉とさせていただきます。
2022年4月6日
公立大学法人 公立はこだて未来大学 理事長・学長
片桐 恭弘