教員プロフィール

教授
大澤 英一 Ei-Ichi Osawa
所属学科複雑系知能学科
専門分野計算機科学,人工知能,複雑ネットワーク
担当科目自律システム特論I
最終学歴東京工業大学理学部数学科卒
学位博士(工学)
経歴1982年東京工業大学理学部数学科卒.1982年,ソニー(株)入社.技術研究所,情報処理研究所を経て総合研究所に勤務.1986年~1987年,ハーバード大学大学院言語学科留学.1989年,(株)ソニーコンピュータサイエンス研究所入社.2000年より現職.1998年~2000年,および,2006年~2010年,日本ソフトウェア科学会理事.2012年~2014年,情報処理学会理事.2010年より日本ソフトウェア科学会評議員.1994年人工知能学会全国大会優秀論文賞,2009年人工知能学会研究会優秀賞,2010年情報処理学会山下記念賞,2014年情報処理学会北海道支部学術研究賞を受賞.
着任時期2000/04

研究内容

私は,エージェントと呼ばれる自律的計算主体により構成される大規模な分散システム(マルチエージェントシステム)に興味を持っており,そこで得られた研究成果をインターネット上の様々な応用に結びつけることを目標にしています.エージェント間の関係を複雑ネットワークとしてモデル化し分析することで,大規模な分散システムを効率良く制御し,また,そこから様々な情報を抽出するための手法などについて研究しています.

研究の魅力

インターネットを基盤とした現在のコンピュータシステムは大規模な分散システムです.この複雑で大規模なシステム,さらにその上に流れる大量の情報を分析し,また,制御するのはとても困難なことです.しかし,マルチエージェントシステムおよび複雑ネットワークという考え方は,この大規模な分散システムを扱う上でとても有効なアプローチです.コンピュータシステムはこれからも発展し,さらに大規模化し,また複雑になっていくでしょう.そういう流れの中で,有益な応用を生み出すためには,この分野の研究成果がとても重要だと考えています.

実績

大規模な分散環境ではシステム内の様々な情報を正確にリアルタイムに集め,それに基づいた判断や意思決定を行うことはコスト的に困難であり,また現実的ではありません.別の言い方をすれば,そのような環境では常に部分的で不完全な情報に基づいた意思決定が必要となります.私は,そのような環境で複数のエージェントが共同するための機会主義的な方法を考案しました.
また,多くのエージェントが共同する場合,何らかの組織を形成しますが,どのような環境においても万能な組織というのは存在しません.組織は,その目的だけでなく,環境変化や活動のフェーズの進行とともに適切な形態が変化していくと考えられます.私の研究では,動的な環境において,どのような組織が最も適切なのかを決定するためのメタレベルの意思決定プロセスをモデル化しました.この研究に関して,1994年人工知能学会全国大会優秀論文賞を受賞しました.

さらに,WWWを主な対象とした大規模分ネットワークからの情報抽出に関しては,リンクマイニングという手法を発展させたいくつかのアルゴリズムを考案し,これらの研究に関しては2009年に人工知能学会研究会優秀賞,2010年に情報処理学会山下記念賞,そして2014年に情報処理学会北海道支部学術研究賞を受賞を受賞しました.

主な著作・論文

1. 沼岡千里,大沢英一,長尾確著:マルチエージェントシステム.共立出版(1998年)

2. 土屋俊(代表)編:AI事典.共立出版(2003年)(執筆担当)

3. 人工知能学会編:人工知能学事典.共立出版(2005年)(執筆担当)

4. Stuart Russell, Peter Norvig著,古川康一監訳:エージェントアプローチ人工知能第2版.共立出版(2008年)(第22章邦訳担当)

5. 千田俊輔,大沢英一,「リンク構造解析によるWikipediaのナビゲーション情報の抽出」,合同エージェントワークショップ&シンポジウムJAWS-2010(2010年)

6. 有澤俊博,大沢英一,「媒介中心性を考慮したレジリエントな自律的ネットワークの構成法」,合同エージェントワークショップ&シンポジウムJAWS-2014(2014年)

7. A Scheme for Agent Collaboration in Open Multiagent Environment. In Proceedings of the Thirteenth International Joint Conference on Artificial Intelligence (1993)

8. A Metalevel Coordination Strategy for Reactive Cooperative Planning. In Proceedings of the First International Conference on Multi-Agent Systems (1995)

9. The RoboCup Synthetic Agent Challenge 97. In Proceedings of the Fifteenth International Joint Conference on Artificial Intelligence (1997)

学生へのメッセージ

進歩が著しい情報技術の分野で成果を出し続けるためには,最先端の技術を身につけるだけではなく,基本的・論理的な思考力や研究開発の進め方の基礎を身に付けておくことが重要です.技術は陳腐化しますが,基本的な思考力や研究開発の基本姿勢はいつの時代になっても求められるものだからです.大学院は,高度な理論や先端的な技術の教育だけではなく,対話的な教育に重点を置いています.この対話を通しての教育は,基礎の確認や論理的思考力を伸ばすことに大変に有効です.そのような環境で学ぶことで,将来の自分の基礎を築くことはとても重要であると考えています.