北海道障害学・学術講演会 資料

 

日時:平成20515日(木)18:00-20:00

場所:公立はこだて未来大学・3階・大講義室

題目:ソーシャル・インクルージョンについて

   地域は人を育み、人は未来を拓く!

   共に生きる社会を目指して!

 

○インクルージョンの障害観・人間観

 「障害」とは…

 

○ソーシャルインクルージョン

 ソーシャルインクルージョンとは、孤立や排除を生み出さず、全ての違いを認め合い万人が共に生きる社会像。

 すべての人が人らしく生活することができるように、支え合いのもとにコミュニティ力の強化と発展を持って、積極的に誰もが共に生きる社会の創造をめざす概念。

 近年、イギリスをはじめとしたヨーロッパの国々では、社会福祉の再編にあたる国家政策の主流的考え方とされ、障害者のみならず貧困者や失業者・ホームレス、引きこもり・いじめや虐待等、社会から排除される全ての人々の市民権を回復し、平等に社会参画することを目標とする。

 私たちが暮らす社会の中には、色々な人たちが、色々な「違い」を持ちながら共に生活している。

 すべてを認め・信じ・はぐくみ合いながら生きることによって、健全な社会は築かれて行く。

 それぞれが輝きを見出し、助け合い、繋ぎ合わさることによって、社会は成熟して行く。

 これらを有効的に機能させていくことにより、社会は新たなる発展の可能性を大きく広げることができる。

 ソーシャル・インクルージョンは違いの肯定から、輝き探しから広がる優しさの波紋。

 

○ソーシャルインクルージョン実現のための三つの視点

T UD(ユニバーサルデザイン)の視点

「できるだけ多くの人が利用可能であるように製品、建物、空間をデザインすること」

 視覚、聴覚、肢体、内部、知的など、障害種別には様々ある。その障害の程度の違いも様々である。 また誰もが、怪我などで一時的に障害をもつこともあるし、言葉のわからない土地に行けば移動制約者となる。

 UDは、“すべての人が人生のある時点で何らかの障害をもつ”ということを発想の起点とする。

 障害の有無、年齢、性別、国籍、人種等にかかわらず多様な人々が気持ちよく使えるようにあらかじめ都市や生活環境を計画する考え方。

 都市空間であれば、誰もが歩きやすいように電柱を地下に埋設した道路、多言語表記のわかりやすいサイン。建物であれば自動ドアや多目的トイレ、日用品であれば、シャンプー容器のギザギザなどが代表例。

 領域は製品、施設、都市などの目に見えるものから、サービスやシステムなどの目に見えないものまで多岐にわたる。

 

U 主体的アクセシビリティの視点

 社会生活のあらゆる側面における活動と参加の平等を基礎として、いかなるマイノリティーニーズも特殊としてあつかうのではなく、普遍性のもとに受容していく。

 ニーズの把握と阻害要因(障壁)の検証を総合的におこない、ユーザーの本意を持って能動的に機能化する。

 物的・社会的・態度的阻害要因の検証アプローチが重要。

 @情報のアクセシビリティ

 手話・文字通訳、日本語字幕、点字・拡大文字、多言語表示など、その他理解しやすい形体の情報開示方法等。人的・物的(インターネットを含む)支援も含め、公益情報の享受と共有、および発信も含めてこれらを容易に実現する。

 A行動・移動のアクセシビリティ

 建物、道路、輸送機関その他の屋内外の設備(学校、住居、医療設備、職場等)全てのアクセス経路の容易化を実現する。

 Bコミュニケーションのアクセシビリティ

 文字や言語に限定しない、意思や感情を伝達しあう全ての方法(インターネット、情報コミュニケーション機器、手話言語等)を活用し、時に柔軟に重複させながら容易化を実現する。合わせてコミュニケーションスキルの総合的向上を図る。

 C社会機関およびサービスのアクセシビリティ

 社会生活をおくる上で必要なあらゆる組織・団体(行政・医療・教育・就労機関等、その他民間活動も含む)のシステムおよびサービスを不利なく享受すると同時に、機能化することによって自らが供給者(社会資源)になり得ることへのアクセスをも容易にする。

 

V エンパワーメントの視点

 まず第1に社会の構成者である人間ひとりひとりに力を与え、市民参加を促すことで社会の力を高めようとする「市民エンパワーメント」と、第2に地域の振興・活性化を図ることで、社会に力を与えようとする「コミュニティエンパワーメント」とに整理して解釈することができる。

 そして、 この二つを相乗的に機能させることによって、社会力全体を向上させることを最終目的とした考え方。これが「エンパワーメント」の概念。もっぱら社会づくり・地域づくりの視点から広義に解釈される。

 インクルージョンの文脈から見た時、特に社会づくりの最小単位を人間ひとりひとりに存在する力と可能性に添えていることに価値を見いだされたい。

 ここでは、第1の市民エンパワーメントと第2のコミュニティエンパワーメントの二つを効果的に機能させることを第3の「社会機能化エンパワーメント」と称しておく。

この三つが単一方向のみではなく、それぞれが複合的に作用し、組織的、社会的、構造に外郭的な影響を与え合うよう機能したればこそ、エンパワーメントは初めて目的を達成する。これは同時に、真のソーシャルインクルージョンの実現をも意味する。

 

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インクルージョンの本質(四つの人間観)

 

 @ひとりひとりは掛替えのない存在。

  全てが代用の利かない大切な存在。大事にすることが当たり前。

 Aひとりひとりは、同じ存在ではない。全てが違う存在。

  固有の良さや持ち味・可能性、得て不得手・向き不向きをそれぞれの「違い」として存在することが当たり前。

  限られた価値だけで人間を見てはいけない。ひとりとして同じ人間は存在しない。

 B人間は決してひとりでは生きていけない存在。

  互いに全てを認め合い・信じ合い、助け合い・支え合う心が必要。

  掛替えのないひとりひとりを大切にする心。

  ひとりひとりの違いを大切にする心。

  合わせて同時に自らを大切にする心。

 C人間は繋がりの中で生きていく存在。

  繋がりは、同情や哀れみ・優劣ではなく、共感し合いながら保たれるもの。

  互いの心を傾聴し、心と心のふれあいの中で生きていくということ。

  人と人とが影響し合い・支え合い共に生きていくこと。

 

  障害のある人が生涯住みやすいまちは高齢者も住みやすい。障害者や高齢者が住みやすい街は全ての人が住みやすい街です。

 

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ささやかな気づき

 

T支えてくれているあなたへ

 あなたには今、笑顔はありますか?

 あなたは今、幸せを心で感じられていますか?

 眉間にしわを寄せ、苦しい気持ちで支えてはいませんか?

 誰のための支援でしょう?

 自分のために苦しむ支援を喜ぶ人など一人もいません。

 そんな支援は直ちにやめて、まず自分を支えましょう。他の方法を探しましょう。

 大好きな私たちだから、共に笑顔を探しましょう。

 大好きな私たちだから、今の瞬間を一緒に生きましょう。

 一緒にいてくれるだけの幸せ、あなたは気づいていますか?

 私が今支えることのできるあなたの心、あなたは気づいていますか?

 あなたの笑顔、それだけが私の願いです。

 そんなささやかな気づきに「ありがとう」

 

U支えられているあなたへ

 あなたは今私を支えてくれていることに気づいていますか?

 あなたは今有りのままという輝きを放っていることに気づいていますか?

 あなたは今一人ではないということに気づいていますか?

 あなたの隣には私がいます。

 あなたの命の輝き、それはあなたにしか放てない価値ある輝きです。

 そのままのあなたが大事。

 あなたの全ては今、私に勇気を与えてくれています。

 私たちの輝きは、必ず誰かの心の闇に明かりを灯します。

 私たちには今、私たちにしかできないことが必ずあります。

 素直な気持ちを今、あなたに伝えたい。

 あなたが今ここにいてくれることに「ありがとう」

 うまれてきてくれて「ありがとう」

 いきていてくれて「ありがとう」

 そんなささやかな気づきに「ありがとう! 」 

 

Vすべての人たちへ

 あなたの傍で小さな心をひらいている私たち、あなたは気づいていますか?

 手を伸ばしてみてください。そこには私たちがいます。

 あなたの中には私がいます。私の中にはあなたがいます。

 心ひとつになる瞬間、あなたは気づいていますか。

 あなたの心、あなたは気づいていますか。

 素直な気持ちを今、すべての人に伝えたい。

 共に生きてくれて「ありがとう」

 すべての命に「ありがとう」

 そんなささやかな気づきに「ありがとう」