ソーシャルデザインに関する研究会
〜児童虐待防止を中心に〜
2013年11月29日(金)
イクラさん(シンガーソングライター
進行&曲目(60分)
1.紫陽花
自己紹介等・死にたがりの話
2.死んだふりごっこと死にたがりのわたし
イジメ、気付き、弟、進路、唄の道への話
3.Monstrous
虐待について思うこと
4.赤壁のロンド
「虐待の連鎖」について
5.ヒカリ
お礼
6.ひとつだけ
−−−−−終演−−−−−−
1.紫陽花
喧嘩の原因はいつもあたしで リビングの上の部屋まで届いてた
「あの子は心が欠けているの」と あたしを詰る母の声が筒抜ける
いい子になりたくて こっちを見て欲しくて
苦い石を呑み込むように 気持ちも言葉も押し込めた
どれだけ憎んだだろう あたしが今日も生きてること
居なければ 諍うこともないのに
飛び降りる勇気さえ 持てずにごめんね
あたしいつまでも あなたの幸せになれない
玄関先の紫陽花が色付く頃 また一年 生きてしまったと泣き濡れた
今年こそはと思うほど 握りしめた刃が喉でふるえた
溜息をつかれて 笑わなくなって
唾を飛ばされてかなしみさえ 蓋をして無理矢理に沈めてきた
どれだけ傷付けたろうあたしを 今日も生きてしまった償いに
鼓動断つ覚悟さえ 出来ずにごめんね
あたしいつまでも あなたの笑顔を見られない
どれだけ愛しただろう あなたを いつか
その腕で抱きしめてくれることだけ夢見て
あなたの望むままに いっそ消えたかった
ごめんね もう あなたのことを愛せない
カタチだけの「家族」は 砂糖菓子のように崩れ
遠く離れ あたしは柔らかい雨に打たれ立っている
2.死んだふりごっこと死にたがりのわたし
死んだふりごっこをよくした 道に転がって目を閉じてた
傍で横たわる野うさぎのように 「誰かわたしも轢いてくれないかな」
やがて夕焼けが燃え尽きる頃 肩を落とし歩くわたしがいた
震えることも忘れた手で 罵声の待つ家のドアを開けた
あの頃のわたしは死にたがりで 消えられるなら何でも良かった
他に何にも要らなかった 命の終わりだけただ願ってた
赤いランドセルを背負って 人気(ひとけ)のない道をうろうろした
テレビを騒がす殺人鬼に 選ばれる日を夢に見てた
あの頃のわたしは死にたがりで おんなじくらい生きたかった
死にたかった 死にたかった 死にたいくらい 生きたかった
あの頃のわたしは死にたがりで 消えられるなら何でも良かった
めちゃくちゃに胸を掻きむしって それでも鼓動は止まなかった
3.Monstrous
生まれた時から戦争で 幼くして銃を渡され
兵士になった少年は 「平和」を理解出来ないという
与えられた画用紙に 描くのは血と土煙
テレビの中 綺麗な人が 「可哀想に」と涙を流す
僕ん家もまた戦場で 幼くして僕を壊され
ガラクタに仕上がった僕は 「世界」が理解出来ない
勇敢な消防士の手で 奇跡的に助かった
幼心のイタズラで 自宅一軒燃やした子ども
あの子はどうして母親に 「無事で良かった」と抱き締められるの?
暴行の末 同じように 焼き殺されないのは何故なの?
ズレきった「アタリマエ」の世界で 僕らはニンゲンに惑う
やさしさにさえ 火傷する 剥き出しのココロに 血の涙
「ニンゲン」はみんな敵なんだ 僕のことなんかわかってて
見下して 蔑んで そのくせ甘い顔をして
「救ってあげる」と伸ばす手は いつか振り払うためでしょう
わかってる わかってる みんな僕が要らないんだろう?
「アタシだけは生かしてあげる」と 僕の頭を撫でるその手で
嗤いながら殴りつけられ 生きるイミなんか 地に落ちて
ボロ雑巾みたいな僕が それでも彼女に正座して
三ツ指ついて叫ぶのは 「生かしてくれてありがとう 母さん」
狂って狂って狂いきれず 殺され殺されても殺されきれず
すっかりイビツになった僕は ニンゲンみたいな ただのバケモノ
ズレきった「アタリマエ」の世界で 僕らはニンゲンに惑う
果てしない明日に目を細め 潰れた身体を引き摺ってゆく
醜い僕は許されますか
4.赤壁のロンド
でも子どもの頃の話でしょ イヤなら逃げれば良かったでしょ
ずっと前に済んだコトでしょう 忘れて前向きに生きなさい
あなたも大人になればわかる 子どもを産んだらわかるわ
お母様が可哀想 もう許してあげなさい
産んでくれた人に感謝ヒトツせず 悪口言ってお金貰ってるの
命まで奪われていないのならば それがお母様の愛情よ
でも結婚だってしたんでしょ 家族と楽しくやってんでしょ
つまりサクセスストーリーでしょ 今がしあわせならもうイイでしょ
あなたも大人ならわかるでしょ 子どもがいるならわかるでしょ
お母様も苦労されたのよ もう愛してあげなさい
育ててくれた人に恩返しもせず 逆恨みして喚いてるの
子どもを愛さない親なんて どこの世界にもいないのよ
反抗期の子どもを諭す目で 投げる言葉はまるで石つぶて
あの理不尽を「躾」と呼ぶのなら 同じ刃(やいば)で背中を焼かれておいで
慰めてんの?励ましてんの? 巡り巡って自己弁護だろ
正義のつもり?正論のつもり? これ以上僕たちを 殺すな
なかったことにされて堪るか 居なかったことにされて堪るか
僕らが生き抜いて来た現実を 遠いフィクションにされて堪るか
僕とアンタの間に聳える 見えない血に染まった赤い壁
乗り越えることが出来ないのなら せめて風穴を開けてやる
5.ヒカリ
それでもあなたはヒカリだった まるで闇のような
わたしは裸足で追い掛けてた 生きるために
「要らない」って言われた 「消えちゃえ」って言われた
「お前さえ居なければ」と手を挙げられた
「ガラクタ」って呼ばれた 「クズ」って呼ばれた
傷付きたくなくて 平気なフリしてた
淋しかったよ哀しかったよ ずっとずっとあなたに手を伸ばしてたよ
苦しかったよ切なかったよ ずっとずっとあなたの夢ばかり見てた
それでもわたしは映らなかった あなたの瞳の中に
わたしの声は届かなかった あなたの胸に
「見るな」って言われた 「触るな」って言われた
「咎められなければ 殺したい」って首を締められた
「お前は生きてることが罪だ」って言われて
わたしはわたしの命を憎んだ
泣きたかったよ叫びたかったよ ずっとずっとあなたに振り向いて欲しかった
大好きだったよ大好きだったよ ずっとずっとあなたに殺して欲しかった
それでもわたしは生きているよ あなたと違う世界で
わたしは光になれるかなぁ 木洩れ日のような
木洩れ日のような
6.ひとつだけ
きみの手はやわらかいなぁ きみの声はあったかいなぁ
きみは今生きてるんだなぁ それだけで ただ嬉しい
きみの目はやさしいなぁ きみの背は愛おしいなぁ
きみは今ここにいるんだなぁ それだけで ただ嬉しい
きみの百年と僕の百年が 重なって出逢えた
きみが生き抜いて僕も生き抜いて 今笑いあえる
きみのこと祈る言葉はひとつだけ
「きみのゆく道に しあわせ あるように」
きみに伝えたい言葉はひとつだけ
「生まれてくれて ありがとう」
生きててくれて ありがとう
ありがとう
ありがとう