Bグループ 幼児の発達心理学

 
  第二言語は早いうちに学んだ方がいいか

子どもに第二言語を学ばせるか考えたことのある親は1人ではないでしょう。
いつごろから習わせればいいのか、また本当に習わせてもいいのか悩む親も多いはずです。
今回は意見の一つとして有名な論文であるジャクリーンらの第二言語の臨界期についての論文[1]を紹介します。

用語
臨界期: 発達過程において、その時期を過ぎるとある行動の学習が成立しなくなる限界の時期。
                                  (大辞林 第三版より)



自然な言語の習得能力は思春期になるにつれて落ちる?
レネバーグという人の研究で思春期の頃に脳がほぼ完成してしまうので言語を司る脳が左脳に固定されてしまい
新しい言語の習得が難しくなることを研究しました。そのため、通常、つまり第一言語の言語学習は思春期後は学習能力を失ってしまうのではないか
という仮説を立てました。そして多くの人は第一言語と同じように第二言語も若いうちでないと覚えられないのではと思うようになりました。
しかし、ジャグリーンらの研究では第二言語に関してはそれは当てはまらないという結果になりました。
熟練の英語を話せるアメリカに3~26年間滞在する46人のネイティブな韓国人または中国人3~39歳を比較して調査を行いました。
被験者はバラエティに富んだ英語の文法の構造と文法の使い方を判断するテストでした。
テストの結果、3~5歳でアメリカに移住した人の結果は一緒にテストを受けたアメリカ人と同じ成績でした。
8~15
歳は年齢に比例して間違いに気づきづらくなっているという結果になり、17~39歳でアメリカに来た人は年齢に比例することなく
テストの結果が悪かった。以上により、言語学習の能力は存在すると言われている臨界期にすぐに消滅してしまうのではなく、大人になるまでに
緩やかに衰退していくという結果が出ました。


言語学習の性能の緩やかな衰退
レネバーグの第一言語に関する仮説とは裏腹に、ジャグリーンらの第二言語の研究は言語習得の臨界期を示すような急激な低下は
幼児期とその能力については、関係性が見つかりませんでした。その代わりに、パフォーマンスが徐々に成人期まで、早いと年齢は約7歳から
緩やかに減少しました。そして他の研究からも同じような傾向が出ていると述べています。


パフォーマンスの低下の始まりは
レネバーグは思春期から低下すると述べていましたが、彼らは米国に8~10歳に定住した被験者におけるパフォーマンスの小さいが著しい低下を
発見しました。また第一言語でも発生していました。しかし、この初期の低下が小さいこと、および他のより大きな変化が思春期の周りに
発生することが示されました。


大人の言語習得の性能
大人の言語習得はどうなっているのか、2つの側面が発見されました。1つ目は言語が成人期に完全に学ぶことができないとならないということです。
これは、第1および第2言語学習などの漸近的性能の年齢差を、テストしたすべての研究では、あてはまっています。
しかし、これはしっかりとした言語の学習でカバーが可能です。2つ目は個人間で大きなばらつきが見つかることです。
ジャグリーンは年齢は言語習得の性能の予測因子でしかなく、頑張り次第でいくらでも学習できると述べています。 言語学習における臨界期効果の
理論的な説明は、大人と子供では違うためもう少し研究が必要であるという結果でした。


言語習得の臨界期の理論上の最終的なまとめ
言語学習能力と年齢との関係について 年齢とはあまり関係がない、臨界期についてはレネバーグの仮説の様に思春期に能力が失われるわけではなく
早ければ7歳から緩やかに失われていき、成人期で止まると言われています。
しかし、努力すればいくらでも上達させることができともあり、一概に失われてしまうと言えるわけではありません。

以上が「第二言語の臨界期」の論文の内容を意訳したものです。


身につかない発音
言語は大人になってからでも努力することでしっかり習得できますが、どうしようもないものもあります。
それは発音です。日本でも日本語をペラペラ話せる外国人はいても、日本人と全く同じように発音できる外国人は多くありません。
心理学者のスティーブン・ピンカーの研究[2]では様々な事例から思春期以降によその土地に移住した人間はその土地の言語を
ネイティブと同じように覚えられても音声パターンを小さい頃から移住した人間の様には覚えられないそうです。

(文責 宮古)


参考文献
[1]Jacquueline, S. Johnson and Elissa L.Newport, ’Critical period effects in second language learning: The influence of maturational state on the acquisition of English as a second language’, Congnitive Psychology Vol.21, pp.60-99, 1989.
[2]スティーブン・ピンカー著・椋田直子訳, ‘言語を生み出す本能()’, 日本放送出版協会, 1995.