Bグループ 幼児の発達心理学

 
  心理療法で幼児期の記憶に触れるのは効果がある?

 

 1. 概要

    あなたは心理療法というものを知っていますか?
例えば病気になった時には薬を飲むことを想像すると思います。しかし、心理療法とはそのような科学的、物理的なものに頼らずに、対話や教示や訓練で認知の仕方等を変えることによって精神的な健康を促すものです。このトピックでは心理療法について書いていきます。


  2. 様々な心理療法

    あなたは心理療法と聞いた時にどのようなものを思い浮かべますか?
典型的な例ですと、大人になってからの問題の原因と思われる子供の頃の経験を思い出させて、それに対峙させるものがあります。
まず、心理療法についていくつかの考えを紹介します。
まずは、ジグムント・フロイトの考え方です。ジグムント・フロイトは私たちが直面している困難の根本は子供の頃の記憶に基づいており、初期の記憶は大事だと考えています。今では心理療法の種類は500種類以上に増えていますが、子供の頃の記憶に重点を置くものはほとんどありません。
実存主義の治療家達は過去の嫌な記憶にこだわるのではなく、現在の自分の潜在的可能性にたどり着くことが重要だと考えています。なぜなら、大半の場合は今の問題に直面せず避けようとしているからです。
※実存主義とはわかりやすく例えると、コップは飲み物を入れるという目的(本質)が最初にあり、作られます(実存)。しかし、人間は最初に実存があり、本質を自分で選び取っていかなければいけない思想です。
認知行動療法の治療家達は自分の捉え方や理不尽な考え方を変えることが重要であると考えます。理不尽な考え方の例は「自分は何をしてもダメな人間だ・・・」といった考え方です。このような凝り固まった自己限定的な考え方から解放することで健康的な行動に従うことができるという考え方です。


 3. 調査と結果

     上でいくつかの心理療法を載せましたが、子供の頃の記憶に触れて洞察したり掘り下げたりするのは効果があるのでしょうか?
その結果は次に書く研究が答えを示しています。 精神分析的治療の研究では42人の患者のうち半数は良くなったが、半分では問題の解決ができなかった結果が出ています[1]。このことから症状の改善には洞察よりも患者(治療者)の情緒的な支持が重要であるという結果が得られました。


 4. まとめ

     今ではたくさんの心理療法があります。精神的な病の対処法には薬だけでなく様々な治しかたが存在し、その一例が心理療法です。紹介したように心理療法にはたくさんの種類がありますが、患者のニーズに合った治療法を選択するようになっています。無理に過去の嫌な記憶に触れる必要はないので、前向きに生きることが大切なのです

(文責 増成)                                                            

参考文献
[1] Bacharach.H, Galatzer-Levy,R., Skolnikoff,A.,&Waldron,S(1991) On the efficacy of psychoanalysis. Journal of the American Psychoanalytic Association,39, 871-916