ソーシャルスキルトレーニング

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スキルを意識する

 ここでは、個人で行うソーシャルスキル・トレーニングについて説明していきます。


 前ページのトレーニング法は、基本的に複数人で、例えばレクリエーションによって行うため、一人ではできません。
しかし、ソーシャルスキルの知識を得て、意識してみるだけでも行動を変えれるかもしれません。そこで、2つのスキルを紹介します[1]

  • 主張するスキル

 主張するために、まずは主張性について理解しましょう。主張性とは、「自分の権利を擁護し、思考、感情、信念を直接的に、他社の権利を尊重して適切な行動を表現する」ことです(ランゲとヤクボウスキー 1976)[1]。これには、
 
・自分の考えていることや思っていることを素直に表現する
・感情に流されず、常に冷静に自分を表現する
・相手や、その時と場合によって柔軟に対応する
・自分の行動を、自分の判断で、自分の責任で行うようにする
の4つがあり、主張性では大切なものとなります[1]

 また、思考は行動に影響を与えるので、行動をする前に「うまく主張できたらいいな」「失敗したらやり直せばいい」と考えるようにするのも効果があると言われています[1]

 主張性を発揮するためには、否定的な自己会話を抑え、肯定的なものにしなければなりません[1]
 否定的な自己会話が始まったら、「ダメ」「やめろ」と言い聞かせ中断させます。その後すぐに、「対処の自己会話」を始めます。このとき、強引にでも始めなければ、また否定的な自己会話をしてしまいかねません[1]

 その他にも、イニシアチブを取る(自分から相手に話しかけるなど、自分から率先して行動をすること)、体を使って表現する(身体を相手にむけるなど)といったことも意識してみるといいでしょう[1][2][3]

  • 人の話を聴くスキル


 ソーシャルスキルには話すことだけでなく、聴くことも含まれています。自分が聴き手になるときには、相手の思いを受け止めるスキルが必要となります[1]

 相手の話を「聴くスキル」は、数あるスキルの中でも基本中の基本であるため、とても重要です[1]。相手の話を聴くことがいかに大切か、それを理解することが聴くスキルの第1歩です。聴くことは、人間関係を作る大切なスキルです。なぜなら、信頼関係の形成に重要な働きをしているからです[1]

 しかし、ただ聞くだけではダメです。相手の話に関心がある、理解したということを伝えることが聴くスキルの最も大切なことです。相手の話を聴くとき、受容的な構えをとるようにしなければなりません[1]

 その他にも、会話の中でも発する言葉でも、相手とのコミュニケーションを良くするものがあります。例えば、相手の会話の内容に対して「どうして」「なぜ」といった言葉から始まる質問をし、会話を広げることや、「うん、うん」「なるほど」「本当?」などの相槌、「○○したんだ」「○○したの?」といった相手の言葉を反射させる、いわばオウム返しをするといったものもあります[1][3]

 また、体を使って相手の話を聴く方法もあります。話を聴いているということを見てわかる様にすることで、相手に「自分の話を聴いてくれている」ということを理解してもらいやすくなります[1]。効果のあるものとしては、相手の言葉にうなづくことや、前傾姿勢になる、相手を注視するといったものがあります[1]

 自分にできる範囲でいいので、試してみてはいかがでしょうか。

<文責:百田佳史>

引用文献

 [1]相川 充(2009), 新版 人づきあいの技術 ソーシャルスキルの心理学, サイエンス社
 [2]小杉正太郎(編)(2006), ストレスと健康の心理学, 朝倉書店
 [3]橋本剛(2006), 大学生のためのソーシャルスキル, サイエンス社
 [4]田中健吾, 相川 充, 小杉正太郎(2002), ソーシャルスキルが2者間会話場面のストレス反応に与える効果に関する実験的
    検討:2者間のソーシャルスキルにおける相対的差異の影響, 社会心理学研究 第17巻 第3号 2002年, 141-149