ソーシャルスキルトレーニング

ソーシャルスキルとは

 ソーシャルスキルとは、対人関係における目標を達成するために、適切かつ有効な技巧・行動・思考の総称のことです。簡単に言うと、「ほかの人に対する振る舞い方やものの言い方」のことです。ソーシャルスキル・トレーニングとは、対人的な問題行動や心理社会的問題を抱えている人たちを対象に体系的にソーシャルスキルを教えようとするものです[3]

どういったものがあるか

 ソーシャルスキルには、人と接するときに大切なものがいくつも含まれています。その中には、普段何気なくしている行動もあり、気付かぬうちにソーシャルスキルを使っているかもしれません。ここでは、どんな行動がソーシャルスキルといえるのかを説明していきます。

 まず、ソーシャルスキルには、声の大きさ、話す速度。表情、身振り手振りなどの対人行動をするときに用いられる要素が含まれています[2]

 具体例として、
・友人と会ったときに挨拶する
・人と話すとき目と目を合わせながら会話する
・相手の言葉に相槌をうつ
といった日常生活でも良く見て取れるものが挙げられます。

また、ソーシャルスキルは行動だけでなく思考も含まれます[3]
「どういったのが相手を不快にしないか」、「印象を良くできるか」。どのような行動が適切か、効果があるかを考えることもソーシャルスキルの一部です[1]

こちらに、一般成人に必要とされるソーシャルスキルの表があります。
自分がそのスキルを持っているかどうか、使えいているかどうかを確かめてみてはいかがでしょう。

ソーシャルスキルが欠けていると

ソーシャルスキルが不足していると、人間関係を上手く構築したり、維持できなくなったりする可能性があります。では、なぜそうなってしまうのか。ここでは、それについて説明します。

 対人行動が下手な人は大きく分けて2つに分類されます。
「攻撃タイプ」「引っ込みタイプ」です[1]

「攻撃タイプ」

 自分の考えていることや感じていることを、すぐに口に出してしまう人です。人と話すとき、声が大きすぎたり、距離が近すぎたりします。また、相手の都合にお構いなしに自分の主張をしたりします[1]。これは、人づきあいを試合や勝負ごとに捉え、相手に弱みを見せたくないからです[1]


「引っ込みタイプ」

 自分の考えていることや感じていることを、口に出そうとしない人です。話す場面が来ても、声が小さかったり表情が暗かったりします。さらに、主張しなければならないときでも自分を抑え、相手のいいなりになりがちです[1]。そのため、日頃のうっぷんを爆発させヒステリックになるときもあります[1]


 対人行動が下手な人は、人づきあいの技術が下手である、すなわちソーシャルスキルが足りていないと考えられます。
 では、ソーシャルスキルが欠けているとどうなるのか?

ソーシャルスキルが欠けていると

 上の画像のようになってしまう可能性があります[1][4]。特に、孤独感と抑うつは同時に起こることが多いです[1][3]。もしこの症状が長期的になってしまうと、最悪の場合「うつ病」になってしまうかもしれません[1]

 憂鬱、意欲がわかない、考えがまとまらない、なかなか眠れない。そういったものを引き起こさないためにも、ソーシャルスキルは大切なのです。

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引用文献

 [1]相川 充(2009), 新版 人づきあいの技術 ソーシャルスキルの心理学, サイエンス社
 [2]小杉正太郎(編)(2006), ストレスと健康の心理学, 朝倉書店
 [3]橋本剛(2006), 大学生のためのソーシャルスキル, サイエンス社
 [4]田中健吾, 相川 充, 小杉正太郎(2002), ソーシャルスキルが2者間会話場面のストレス反応に与える効果に関する実験的
    検討:2者間のソーシャルスキルにおける相対的差異の影響, 社会心理学研究 第17巻 第3号 2002年, 141-149