先端領域を先端的教育で

建学の理念

公立はこだて未来大学は、「人間」と「科学」が調和した社会の形成を願い、深い知性と豊かな人間性を備えた創造性の高い人材を育成するとともに、知的・文化的・国際的な交流拠点として地域社会と連携し、学術・文化・産業の振興に貢献することを建学の理念としています。

公立はこだて未来大学は、函館圏公立大学広域連合を設立母体として、地域の志と熱意を糧に2000年に開学しました。函館は、日本がはじめて近代の世界に向けて開いた港のひとつとして、ユニークな歴史をもつ港湾都市です。幕府の箱館奉行所が設けた諸術調所は、日本最初の西洋科学技術の教育機関であり、さまざまな成果や人材を生み出しました。このまちの人々は、外国の異文化をどん欲に吸収しながら、新しい科学技術や文化、産業、そして教育などの分野で独自の取り組みを重ねてきました。

道南圏唯一の公立大学である公立はこだて未来大学は、情報系単科大学として、20世紀末から爆発的に進展をつづける情報社会のグローバル化に呼応しながら、システム情報科学を基軸にした人材の育成と研究の未来、そして地域の未来を拓くことを針路としています。

システム情報科学の創成

本学では開学以来、システム情報科学を独自の学術領域として創成することを目指してきました。本学が目指すシステム情報科学は、20世紀の情報科学の発展を礎に、21世紀に必要とされる「人間を中心とする」新たな情報科学の総合分野を創成しようとするものです。情報科学、情報工学といわれる専門分野は、わずか半世紀ほど前に確立した比較的新しい領域です。20世紀後半の情報技術の爆発的発展を背景に、どちらかといえば「技術を中心とする」学問分野として発展してきました。

本学の目指すシステム情報科学は、従来の情報技術の可能性を、さらにわたしたちを取り巻く包括的な現実世界—人間システム、社会システム、自然システム、そして人工物システムのすべてが絡み合った世界へと拡張していくことに挑戦しています。世界は無数の要素が絡み合った複雑なシステムとして存在しています。自然も、社会も、人間が作り出した人工物も、現実の世界ではすべてが渾然一体と繋がり合ったシステムであり、ひとつの環境世界を構成しています。—例えば、ビッグデータといわれる新たな分析対象は、情報ネットワークで繋がった莫大なデータを、ひとつの対象として取り扱おうというものです。近年の気象予報データの精緻化なども、天候という自然現象をひと繋がりのシステムとして分析する手法の進化により徐々に実現してきました。

システム情報科学では、複雑な現実世界をできるだけあるがままの対象として取り扱い、数理科学的手法、デザイン的手法、社会科学的手法などを取り入れながら、システムとして表現し制御することを重視しています。本学の70名の教員、そして学生たちが、科学とデザインのアプローチを融合し、対象世界をシステムとして見据え、人間と技術が調和した社会の実現へ貢献すべく、日々活動を展開しています。

オープンスペース、オープンマインド

20世紀最後の年、2000年に開学した公立はこだて未来大学は、20世紀の科学技術や学芸・文化が達成した実りの上に、20世紀とは異なる未来志向の研究と教育を創成するための場として構想され、設立されました。この進取の気風と実践のベースとなっているのが、「オープンスペース、オープンマインド」という精神です。

20世紀の教育は、教える教員から教えられる学生へ、知識を一方的に流し込むスタイルでした。また教育とは、決められた教室で、決められた時間に行われる講義を意味しました。わたしたちの構想は、まずこのスタイルを変革することから始まりました。教員と学生のあいだに双方向の学びの回路を創る、学生と学生が共に学び合う。学生がキャンパスの中にいるあいだは、すべてが学びの時間であり、すべてが学びの空間である。
—こうした発想のもとで、本学は設計されました。

5階分を吹き抜けにした象徴的な大空間(スタジオと呼びます)は、そこにいる全員に1つの空間を共有する感覚をもたせ、学びの共同体としての一体感を生み出します。すべての機能がひとつの大きな建物空間の中にレイアウトされ、教員の研究室、講義室、図書館、事務室などの部屋はすべて透明なガラス張りです。誰もがいま学内で何が起こっているのかを、一望のうちに知ることになります。そしてこの空間と一体となったカリキュラムやプログラムのもと、グループワークやディスカッション、プログラミング、デザイン、ものづくり、コミュニケーション、プレゼンテーションなど様々な活動が、あちらこちらで思い思いに繰り広げられます。オープンな空間と、オープンな学びが、公立はこだて未来大学のすべての活動の根源にあります。

施設紹介

はこだて未来大学設計イメージ
山本理顕設計工場提供