Event
2009-11-07

平成21117日学術講演会「北海道から地球の未来を考える」を開催しました

日本学術会議北海道地区学術講演会

北海道から地球の未来を考える

趣旨

理科離れが問題にされている。しかしながら、山積している地球温暖化などの環境問題を解決するには、科学技術が不可欠である。そこでは、グローバル化の中で相互依存関係を深める社会の複雑な問題解決に寄与しうる科学技術の力が求められている。科学技術は今、地球にどのような未来を描き、人々にどのような夢を与えうるのだろうか。未来を創造するうえで、情報技術はどのような貢献をできるのだろうか—-。このような問題に、日本で唯一、”食料自給率100%超”を誇る北海道から、”解”を発信したいと考える。

鍵はIT(情報技術)応用にあると考えている。IT(情報技術)とはインターネットのことだけではない。もっともっと大きな可能性を秘めている。「情報」を活用することによって、「物質」や「エネルギー」を補うことが可能である。情報は物理量ではないから、自然法則の制約が少ない。制約はむしろ人間の側にある。IT応用の鍵は想像力にある。そのために、科学技術をバックグラウンドに持つ理系SF作家に登場いただく。科学技術を「空から」、「海から」…、様々な角度から俯瞰し、未来を語ることのできる方々に集まっていただいた。

主催: 日本学術会議北海道地区会議
共催: 公立はこだて未来大学
日時: 2009年11月7日(土)13:30-17:05
会場: 公立はこだて未来大学講堂
連絡先: 参加申込は以下の申込専用WEBページまたは電話で申込みを受け付けます。
(申込専用WEB URL、このページの下部にはリンクがあります。)
https://qooker.jp/Q/ja/funhakodate/entry/
(電話)
北海道大学学術国際部研究協力課
011-706-2155または2157

プログラム

13:30-14:00
オープニング講演: 日本学術会議副会長 鈴村 興太郎(早稲田大学)
「地球の未来を考えるために: 人文学・社会科学が果たす補完的役割」

総合司会: 毎日新聞記者(「理系白書」の)元村 有希子

14:00-14:30
問題提起: 日本学術会議連携会員 中島 秀之(公立はこだて未来大学)
「ITは人類を救うか?」

ITは様々な可能性を秘めている。現在我々が直面している様々な問題もITで根本的に解決できる場合がある。過疎化、環境問題、医療問題などを例にとり、それらの問題をITで如何に解決できるのか?を例示し、一緒に考えて行く視点を提供する。

14:30-14:35
コメント: 元村 有希子

14:45-15:15
講演1: 瀬名 秀明(SF作家)
青い空から未来を語ろう

パイロット免許を取得して気づいた「3次元的思考」をもとに、近年社会的にも大いに注目されているインフルエンザ・ロボット・環境知能の諸問題について語る。未来へのまなざしを来場者の皆様と共に探る。

15:15-15:20
コメント: 元村 有希子

15:20-15:50
講演2: 藤崎 慎吾(SF作家)
SF的視点からの「多様性」

環境問題を論じる際によく使われる言葉として「持続可能性(sustainability)」と「多様性(diversity)」がある。2010年は国連によって「国際生物多様性年(International Year of Biodiversity)」と定められており、後者の「多様性」については、ますます議論が盛んになると予想される。とくに話題となるのはもちろん生物や生態系の多様性だろうが、見過ごされがちなのが民族や文化の多様性と環境との関わりである。「ヤマト」とは異なる民族・文化を残す北海道で、やや突飛な視点から両者の関係を楽しく捉え直す。

15:50-15:55
コメント: 元村 有希子

16:10-17:00
パネル討論

コーディネータ: 元村 有希子
パネリスト: 中島 秀之、瀬名 秀明、藤崎 慎吾

17:00-17:05
クロージング: 日本学術会議北海道地区会議代表幹事 岸玲子(北海道大学)

講師略歴

瀬名 秀明(せな・ひであき)1968年生まれ。作家。薬学博士。東北大学大学院薬学研究科在籍中に『パラサイト・イヴ』で日本ホラー小説大賞を受賞。同作品はゲーム化、映画化、マンガ化された。『BRAIN VALLEY』で日本SF大賞を受賞。他に長篇『デカルトの密室』、エッセイ集『おとぎの国の科学』、科学ノンフィクション『ロボット21世紀』『ミトコンドリアのちから』など著書多数。近著に『大空の夢と大地の旅 ぼくは空の小説家』(光文社)、『パンデミックとたたかう』(共著、岩波新書)など。

藤崎 慎吾(ふじさき・しんご)1962年、東京都生まれ。埼玉県在住。米メリーランド大学海洋・河口部環境科学専攻修士課程修了。科学雑誌の編集者や記者、映像ソフトのプロデューサーなどをするかたわら小説を書き、1999年に『クリスタルサイレンス』(朝日ソノラマ)でデビュー。現在はフリーランスの立場で小説のほか科学関係の記事やノンフィクションなどを執筆している。最近の作品に『ハイドゥナン』(早川書房)、『鯨の王』(文藝春秋)など、ノンフィクションには共著で『深海のパイロット』(光文社)と『日本列島は沈没するか?』(早川書房)がある。水深1500mの海底まで訪ねたほどの海好き。

元村 有希子(もとむら・ゆきこ)1989年、九州大学教育学部心理学専攻卒業、毎日新聞入社。2001年から科学環境部。高校時代、理科が苦手で文転したにもかかわらず、35歳にして科学のおもしろさに目覚める。06年、第一回科学ジャーナリスト大賞を受賞。07年夏から1年間、英国で科学コミュニケーションを学ぶ。著書に「理系思考」(毎日新聞社)など。理系白書ブログ管理人。

中島 秀之(なかしま・ひでゆき)日本学術会議連携会員、公立はこだて未来大学学長。1952年西宮市生まれ。関西弁と東京弁のバイリンガル。東京大学大学院情報工学専門課程修了(工学博士)。人工知能を状況依存性の観点から研究。複雑系の情報処理とその応用に興味を持っている。マルチエージェント国際財団理事、認知科学会会長、情報処理学会副会長などを歴任。情報処理学会、人工知能学会各フェロー。主要編著書に瀬名さんと共著の「知能の謎」(講談社ブルーバックス)、「思考」(岩波講座認知科学8)、「Prolog」(産業図書)など。