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2015-02-25

「コネクションカフェ」ナルホド!
コミュニケーション能力って何だろう?

ある平日の昼下がり、はこだて未来大5Fの一角にある「コネクションズカフェ」を訪ねてみました。ここは、課外でコミュニケーションを楽しみながら英語を実践的に学べる場、未来大ならではの「学びの支援」のひとつです。学びといっても堅苦しさはなく、談笑スペース的な雰囲気。だから“教室”ではなく、“カフェ”なのですね。ちょうど1年生8名がファシリテーター(進行役)のダイアン先生を囲んでセッションが始まったところです。

どのファシリテーターと、いつ?まずはサインアップから

セッションから少し離れたテーブルでコネクションズカフェの統括マネージャー、アンドリュー・ジョンソン先生(情報アーキテクチャ学科准教授)にカフェの運営と内容についてお聞きしました。

―ファシリテーターは、どのような方たちですか?

コネクションズカフェには、4人のファシリテーターがいます。インド出身のアルンバガイ先生は、ヨガ講師もされているので健康に関心が深い。アフリカ出身のムランダ先生は、北大の水産学部大学院(博士課程)に在籍。なかなか知り得ないアフリカの未知の文化を学べます。日本人の吉田綾先生は、ご主人がオーストラリア人。オーストラリア在住が長かったので、ネイティブと同じくらいの英語コミュニケーションができます。本日の担当のダイアン先生は、ハワイ出身の日系の方。顔立ちは日本女性ですが、ネイティブ・スピーカーです。それぞれに違う出身の国のバックグランドを持っています。

テーブルに置かれた予約シートセッションに参加したい学生はカフェの前に置かれている予約シートにサインアップします。ファシリテーターは、その日にサインアップした学生を見て、話すのが苦手そうな学生には遊びの要素を入れて、楽しく英語でコミュニケーションできるような工夫をしています。セッションメニューをあらかじめ決めているのではなく、学生たちの要望に合わせて臨機応変に対応していますね。先生たちが持ってきた題材でセッションを行ったり、学生の質問に答えたり、アドバイスをするなど。いずれにしても、学生たちにストレスやプレッシャーを与えない配慮をしています。

―ストレスフリーは、コミュニケーションで大切な要素なのですね。

そうですね、リラックスが大事。最初は緊張していたり、うまく英語コミュニケーションがとれなくても、楽しいからと何度も来る学生もいます。セッションのほかに、ふらりと訪れてファシリテーターとフリートークをしたり、ゲームを楽しんだり、TOEICの参考書を閲覧しながら勉強したり、と参加スタイルはさまざまです。

コネクションズカフェを開設した10年ほど前は、このような場があることが周知されておらず、「1年生のときから知っていればよかった」と、後悔する4年生がたくさんいました。今は新入生オリエンテーションで、コネクションズカフェの存在を紹介しています。英語コミュニケーションに親しめる場であること、毎日昼休みに開放されていること、5Fのラウンジにあるので、みなさん来てください、と。授業としての「コミュニケーション」にも有利ですし、1回は必ず来てくださいとアナウンスもしています。熱心に勧めていることもあって、今はほぼ全員の学生がこの場の存在を知っています。

楽しみながら「知識を深める、文化を知る」というコミュニケーション

―ゲームも英語で?

絶対に日本語を使っちゃいけない、というわけではなく、英語バージョンのゲームで遊ぶので、必然的に英語コミュニケーションになるんですよね。ゲームは、毎週、火・水・木曜のお昼休みに開催しています。

コネクションズカフェでは、いろいろな角度から英語に親しんでもらいたいというコンセプトから、さまざまなイベントも実施しています。海外旅行へ行った学生が体験談を発表したり、毎年クリスマスツリーの飾り付けをしていますし、ピンポン大会も実施しましたね。

ゲームでハイタッチする学生たち

ゲームで協力している学生たち

卓球をする学生たち

先週開催したイベントは、英語でトリビアクイズ。クイズ番組などで、イエスだったら右、ノーは左などに別れて移動しますよね、あのスタイルで。たとえば「The longest river is Amazon in the world.(世界で一番長い川はアマゾン川)」「Yes? or No?」、この問題を見せて、学生たちがYesとNoそれぞれに移動する。もし不正解だったら、抜けていく。「中国よりカナダの面積のほうが大きい」という問題もありましたね。実はカナダのほうが少しだけ大きいんですね、私も知らなかった(笑)。クイズは、「コミュニケーション」という授業に参加している2年次の学生たちが作成してくれました。あ、そうそう先ほどの川ですが、正解は「No」ですね、ナイル川が世界最長ですよ」

―相手を思わず引き込む、これもコミュニケーションの大切なポイントのようですね。ところで英語コミュニケーションの世界基準といえば、TOEIC。コネクションズカフェではTOEICに関して何か支援はされていますか?

未来大もTOEICの試験会場に指定されているので、コネクションズカフェはその受付窓口になっています。TOEICの参考書を取り揃えていますので、学生が自由に閲覧したり、学生からの質問などにファシリテーターが答えたり、アドバイスをしています。

学生たちにとって、このカフェはどのような存在なのでしょう

コネクションズカフェを訪れた学生たちの反応、たとえばどのような感想があるのでしょう。ジョンソン先生にいくつかピックアップしていただきました。

「市内には英会話教室もありますが、フィーが高かったり、大学のほかに英会話スクールに通わなくてはならないので、大変。自分の大学のなかでちょっと英語に触れたい、英会話力を高めたいと思ったときにこういう場があるのは助かる。すごくラッキー」

「通っているうちに自分と気の合うファシリテーターと出合い、その先生の担当の日にはしょっちゅう来るようになった。お友だち感覚で話ができるから、すごく楽しい」

近々シンガポールに行ってみたいという学生は、「旅行に役立つ英会話を学びたい」というのがコネクションズカフェに通う動機だったり、「文化的なことを前もって勉強してから行きたい」など、旅行準備のためにという学生も数名いましたね。ほとんどが前向きでポジティブな感想ですね。

あちらのテーブルで盛り上がっていた、ダイアン先生のセッションもそろそろ終わりのようです。参加した学生たちにもマイクを向けてみましょう。

高田航太さん(1年生)

高田航太さん 今日は初めての参加。ダイアン先生のお話をヒアリングして書き取る、簡単な質問に答えるというセッションでした。楽しかったですよ。もともと英語は好き。もっと話せるようになりたいし、将来留学もしたいので普段から自主的に発音の練習もしています。

村上亮太朗さん(1年生)

村上亮太朗さん僕も初めての参加です。英語はどちらかというと苦手なんですけど、普段、自分から英語で話す機会も少ないので、こういう場があるのはいいなと実感しました。楽しかったし、友だちを誘ってまた来ようと思います。

英語コミュニケーション、上達の秘訣は?

―日本では中学、高校、大学と英語を何年もかけて学ぶのに、英語を話せる人は少ない。これについてジョンソン先生はどう思われますか?

日本の中学校、高校では、授業で英語を学ぶことによってどのようなことができるのか、示していない。生徒たちは何のために英語を勉強しているのか、理解していないような気がします。目的がないまま、学習する。私には、ただテストのためだけに勉強しているように見えます。試験に合格するための英語学習なのかな。
本来ことば(言語)は、人と人をつなぐためのもの。それを使ってコミュニケーションするためのツールなのに、そこがまったく重要視されていない。英語コミュニケーションで大切なことは、語彙力や文法よりも「相手を理解しよう、伝えよう」という意欲が大事なのです。

―コミュニケーション上達の秘訣があるとしたら?

ミステイクOK、失敗を恐れないこと。たとえば授業で「何か質問は?」と聞いたら…シーン(笑)。誰も言葉を発しない。せっかく大学に勉強しにきているのに、全然質問をしない、もったいない。わからなくてもそのままにしている学生が多いと思いますね。挑戦してみよう、トライしてみようという意欲のある学生のほうがどんどん伸びていきますね。

ジョンソン先生

コネクションズカフェで英語コミュニケーションを学び、海外旅行に行った学生がいます。彼女は帰ってきてから、旅行の体験談を披露する発表会を開きました。「もっと英語ができれば現地の人とコミュニケーションできたのに」と、残念がっていました。彼女はその後もカフェに通い、再度海外へ。そしてまた発表会を開きました。英語力が格段に向上したわけではないのですが(笑)、それでもいいのです。それがいいのです。トライする、伝えようとする、その姿勢こそがコミュニケーションなのです。

―日本語には独特の“間”があったり、言葉に出さずに“察する”という態度をとったりします。ジョンソン先生にとって、これらの日本語コミュニケーションは難しい?

私は、日本語コミュニケーション、英語コミュニケーションと分けて考えてはいません。よく「日本人はシャイだから」と聞きますが、シャイは個人差によるものでしょう。関西人にシャイは当てはまりません。コミュニケーションとは、相手を理解し、自分を伝えること、分かり合うということ。地域や言語の違いはあっても、コミュニケーションのコンセプトは同じなのです。

インタビューの間じゅう、笑顔を絶やさずこちらの質問ひとつひとつにていねいに答えてくださったジョンソン先生。その場を和やかにし、かつ質問者にプレッシャーを与えない先生の配慮が、まさに“コミュニケーション”そのものだったような気がします。