教員紹介

田柳 恵美子

特任教授
TAYANAGI, Emiko

学生へのメッセージ

学生時代からバンドを組んでジャズピアノを演奏してきました。ジャズ好きな人、一緒にセッションしましょう。

研究内容

「知識科学」は、情報科学・認知科学・社会科学の学際的領域として、1990年代に確立した新しい分野です。そのなかでも、知識社会システム論という、社会と人間を結ぶ領域が私の専門です。情報社会・知識社会と言われる今日の社会環境における人間/集団/組織のあり方、地域やコミュニティのあり方、科学技術の役割などについて研究しています。具体的には次のような研究テーマに取り組んでいます。

  • 産学官連携政策の国際比較、地域イノベーション(2001-)
  • 大学や研究機関における科学コミュニケーション(2004-)
  • 技術倫理、技術者倫理教育(2009-)
  • 科学技術分野における企業の社会的責任(CSR)(2009-)
  • 音楽と創造的認知(2009-)
  • 音楽の熟達化(2012-)
  • スマートシティの社会論(2012-)

研究の魅力

「情報社会」が、情報がデジタル化され伝達・共有されていく社会だとすれば、「知識社会」とは、情報社会という基盤の上で、人間(あるいは人工物や社会環境)が相互にオープンネットワークで結ばれ絶えず相互作用し、知的活動の可能性が増幅・拡張されていく社会です。

人間は自分の頭の中に蓄積した知識だけではなく、社会に氾濫している情報や、他人の発信する情報を、あたかも自分の知識のようにリアルタイムに収集し利用することができるようになりました。専門家やジャーナリストなど一部の人にしかアクセスできなかった情報に、一般の人が容易にアクセスすることができるようになり、誰もが自分自身の知識や意見を、世界中の人々に発信することも可能になりました。

「知識」はいまやあらゆる人々にとっての権利となり、個人や社会の可能性を大きく広げもすれば、揺るがしもする原動力となっています。スマートシティ、ビッグデータなど、知識を基盤とする新しい技術変革が、これまでにない方法での問題解決を可能にする一方で、世界が「知識」でつながることにより、宗教、民族、思想、貧困、経済格差などをめぐる対立がより鮮明になり、対立が激化する可能性も高まっています。

こうした知識社会の正と負の両面をしっかり捉え、価値を分析し、未来の社会デザインにつなげていくことが、知識科学に期待される学術的・社会的な貢献使命であり、また魅力でもあります。

実績

大学教員になるまで20年近く、主にフリーランスで、科学技術系分野でのPRや出版の企画制作、研究評価・研究計画のコンサルティングに携わってきました。「研究をコミュニケーションする」という長年の仕事のキャリアは、現在の社会連携センタ―での「大学と社会をつなぐ」仕事や、自分自身の研究活動にも生かされています。

2000年代に入って、社会人としてのキャリアを学術研究へ発展させるために、欧州と日本の地域産学官連携や技術移転の調査研究や、研究組織における科学コミュニケーションの調査研究を行い、その成果を欧州組織学会(EGOS)、科学技術公共コミュニケーション学会(PCST)などの権威ある国際会議でたびたび発表もしてきました。その後、地域イノベーション研究、認知社会学、認知音楽社会学の研究、技術者倫理教育の研究活動に取り組み、『地域政策研究』『認知科学』『日本経営倫理学会誌』等のジャーナル論文誌に研究論文を発表しています。

その一方で、科学技術振興機構(JST)の産学官連携ジャーナル 編集委員、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)技術委員、兵庫県科学技術会議諮問委員などを務め、政策提言活動にもかかわってきました。函館に赴任後は、はこだて国際科学祭や、はこだて科学寺子屋といった、地域において科学技術理解を深める活動に取り組んできました。現在は、近郊の大沼国定公園で毎年開催される「大沼ジャズフェスティバル」の実行委員や、「まちdeゼミナール」という市民講座の活動にも取り組んでいます。

主な著作・論文

  • 田柳恵美子「音楽演奏熟達化研究への一人称物語記述手法の導入」知識共創 vol.4 (北陸先端科学技術大学院大学)(2014.8) pp.Ⅲ5-1-10
  • 田柳恵美子,中島秀之,松原仁「デマンド応答型公共交通サービスの現状と展望」2013年度人工知能学会全国大会:富山, (2013, 6) 2J4-OS-13a-1(口頭発表)
  • 田柳恵美子「現代倫理と知識創造:技術者倫理を例証として」知識共創 vol.2 (北陸先端科学技術大学院大学)(2012.8) pp.Ⅲ2-1-10 *萌芽論文賞受賞
  • 田柳恵美子「技術者倫理教育における学生の態度変容の研究:第1フェーズの成果から」経営倫理学会誌 vol.19, (2012.3) pp.141-152
  • 田柳恵美子「音楽演奏における知識創造のモデル化」知識共創 Vol.1 (北陸先端科学技術大学院大学)(2011.3)pp. Ⅲ2-1-10
  • Tayanagi, Emiko, ‘Strategic performance design and innovation: A case of creation and innovation in modern jazz’. ISIDC 2010 (The 2nd International Service Innovation Design Conference). (Hakodate, Japan) (2010.10)
  • 田柳恵美子「音楽のパフォーマンスデザインとイノベーション:ジャズにおける即興と革新を事例として」認知科学 Vol.17, No., pp.459-473 (2010.9)
  • Tayanagi, Emiko, ‘Exploring Organizational Science Communication: A Case of Governmental ICT Institute in Japan’ Conference paper for the International Conference of PCST (Public Communication of Science and Technology)-10. (Malmo, Sweden) (2008.6)
  • 田柳恵美子『研究組織のサイエンス・コミュニケーション:政府系研究機関情報系研究部門の事例研究』博士論文, 北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科(2008.3)
  • 田柳恵美子「サイエンスPRにおける市民参加-協働型コミュニケーションの可能性:政府系研究機関 情報系研究部門の事例研究」広報研究 第12号(2008.3)
  • 田柳恵美子「社会研究における認知的アプローチの潮流:政策実践との往還の中で」認知科学 Vol.14, No.1, pp.60-73 (2007.3)
  • 田柳恵美子「地域イノベーションと組織的知識創造のダイナミクス:自律展開期を迎えた日本のクラスター政策への提言として」日本地域政策研究 2006年度 第5号, pp.97-104 (2007.3)
  • 金井壽宏, 田柳恵美子『踊る大捜査線に学ぶ組織論入門』かんき出版(2005)
  • Tayanagi, Emiko, ‘Civic Entrepreneurship as a Key Role to Organize Regional Innovation Networks: a Comparative Study of Local University-Industry- Government Relations in Japan’. In “Regions in Competition and Co-operation: Conference proceeding book of Uddevalla Symposium 2004.” University of Trollhatan/Uddevalla, Sweden (2005)
  • Tayanagi, Emiko, ‘What direction should the cluster policy take, top-down implementation or bottom-up emergence? : The case of Japan’, Paper for the Conference in honour of Professor Sebastiano Brusco, “Clusters, Industrial Districts and Firms: The Challenge of Globalization”, Modena University (Modena, Italy) (2003.9)
  • Tayanagi, Emiko, ‘Spatial Inter-firm Networks in the Post-modernization Era: The Case of Town Factories’ Agglomerations in Japan’, Cahier de Recherche DMSP, n。 322, June. (パリ・ドーフィーヌ大学院戦略マーケティング研究所リサーチペーパーライブラリ所収) (2003.6)