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田中吉太郎准教授が2020年度日本数学会応用数学研究奨励賞を受賞

田中吉太郎准教授(複雑系知能学科)が、一般社団法人日本数学会が表彰する2020年度の応用数学研究奨励賞を受賞しました。全国から3人が選ばれ、田中吉太郎准教授はその一人となりました。
同賞は、2013年に日本数学会において、応用数学分野における研究を奨励し、分野全体の交流・発展を図ることを目的として設立されました。応用数学に関連する分野において優れた業績をあげた34歳以下の若手研究者に対して、その業績を顕彰するものです。
今回の受賞は、生物の発生現象の過程で細胞モデルの状態の数式化に取り組んだ研究が評価されました。

研究の概要

 PDF版

これから取り組みたい研究について
  • 興味のある現象(パターン形成、(機械)学習、ひまわりの花の模様)の数理モデリングと現象の数学的な解明
  • 機械学習(再帰的ニューラルネット)の数理モデリング、解析、高速で高精度な計算機を作成すること
  • 発生現象の数理解析から得られた知見を医学に応用し、何らかの治療に活かしたい。
学生・受験生へのメッセージ

数学は抽象化して物事を取り扱うことができるので、普遍的な理論を構築することができます。一方、数理モデリングは現象をとにかく掘り下げて、現象の大事と思うところを具体化して数式にします。私の専門としている現象数理学は、現象から数理モデリングを行って数学解析を行うこともしますし、抽象化した理論を構築して具体的な現象にアプローチすることもあります。このように抽象と具体を行ったり来たりしながら、現象の解明を行い、新しい知見を発見し、証明を行います。

こうした取り組みは学生にとっては混乱しやすいかもしれませんが、片方の道筋を通ったからこそ見つけることができる理論や発見があり、両側からアプローチすることは非常に大事だと考えています。今回受賞した研究内容は実は、ショウジョウバエの脳の神経形成に見られる分化の伝搬現象の数理モデリングがきっかけで、そこから普遍的な数学の理論を構築することができたのです。

日本の応用数学の分野では、学術分野からだけでなく、産業からの要請もあって、解析もできて、数理モデリングもできる人材を育成しようしています。これはものすごく難しいことで、これまでこうした動きはあまりなかったようです。現在進行形でこうした人材を育成しようとしているので、応用数学の分野はいい意味で、挑戦的な過渡期といえます。

数学の理論を作ることも、数理モデリングをすることもそれ自体が面白いですが、二つのアプローチを行うことで、新たな問題解決や問題発見の能力を見つけることができると考えています。私自身も若手研究者ですが、学生や受験生の皆さんには、解析と数理モデリングを両輪として研究活動を行い、「世界で初めて、これこれを数式化に成功した」「何々を発見した」「この問題を証明した」という成功体験を積んでいってほしいと思っています。