教員紹介

櫻沢

教授
SAKURAZAWA, Shigeru

学生へのメッセージ

「生物」や「化学反応」はもちろん、「心」や「意識」だって情報科学のテーマ。「機械」と「心」を本気で結び付けてみたい人、共に学びましょう。あなたにとっての「心とは何か」を教えてください。

仕事の紹介

機械も生物も、無数の部品が複雑に組み合わさって働いています。しかし生物をつくることは簡単ではありません。これは、部品同士の相互作用が機械と生物とで根本的に違うからです。

その違いを単純に言うと、例えば、「楽譜と指揮者があるオーケストラ」と、「楽譜も指揮者もない即興のフリージャズバンド」との違いのようなものです。前 者は、全 く見ず知らずのメンバーで構成されても演奏可能であり、何度でも繰り返し演奏可能です。しかし後者は、「はじめまして。」で始まり、その時々にな される互いのコミュニケーションそのものが演奏であり、全 く同じ演奏は普通繰り返せません。双方、結果として生み出されるものは「音楽」ですが、それらが 生まれる過程は全く異なっています。

つまり違いは、システム全体を統率する仕組みにあります。機械を構成する部品には全て時計と予定表が与えら れていますが、生物にはそれがありません。生物を構成する部品の動作は、各 々の近くにある部品同士のコミュニケーションのみに委ねられているにもかかわら ず、生物は全体として統制のとれた動作を可能としています。そこに仕掛けられているタネとは何か?これが私の研究です。

現在私は、「生 命の起源」と「タンパク質の結晶成長」をテーマとし、分子のコミュニケーションを観察しています。分子のコミュニケーションが見えてくるのは、分子に何ら かの環境変化を与えた時です。分子が環境変化に対応しきれない状態(非平衡状態)の時に、分子同士が協力して新たな方法や物をつくることで、状況を回避し ようとする動作が見られると期待できます。 「 生命の起源」の研究では、原始地球上の環境を実験室で構築し、アミノ酸が自らタンパク質へと進化する過程を再現する事を試みています。ここでは、分子が 自分自身の進化に必要とするエネルギーを、環 境の温度変動をきっかけとして獲得するメカニズムの創出を目指しています。これはいわば、分子のエンジンとも 言えるものです。

「タンパク質の結晶成長」の研究では、タンパク質のより良い単結晶を作る事を目指しています。これは、タンパク質分子のX線立 体構造解析に必要とされます。結晶成長は、無 数の分子が変化する環境の中でたった1個の秩序をつくる現象です。ここでなされる分子間のコミュニケーション を、蛍光光学顕微鏡により直接観察する事を試みています。また、ミ トコンドリアの膜に存在するあるタンパク質に着目し、その結晶化と構造解析も目指してい ます。

最近の著書

  • The hysteretic growth of microspherical particle consisting of thermal heterocomplex molecules from amino acids: Shigeru Sakurazawa, Hajime Honda, Eiichi Imai and Koichiro Matsuno: Viva Origino 22, p.p. 81-88, 1994
  • Microcapsule formation in self-assembly of thermal heterocomplex molecules from amino acids: Shigeru Sakurazawa, Eiichi Imai, Hajime Honda and Koichiro Matsuno: Colloid & Polymer Science 274, p.p. 899-903, 1996
  • Diffusion controlled formation of husk-like microcapsules: Shigeru Sakurazawa, Tsunayuki Ishimori, Hajime Honda and Koichiro Matsuno: Colloid & Polymer Science 275, p.p. 502-505, 1997
  • 高分子電解質の非平衡ダイナミクスにおける長時間緩和と秩序形成現象: 櫻沢 繁:「複雑系5」研究会報告, p.p. 653-655, 1997
  • Orientation of protein crystals grown in a magnetic field: Shigeru Sakurazawa, Tomomi Kubota, Mitsuo Ataka: Journal of Crystal Growth 196, p.p. 325-331, 1999